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EUとの離脱合意案を巡り行き詰まっている英下院は、12月に総選挙を実施することを決めた。しかし、離脱方針と経済政策の両面で有権者を満足させる選択肢を提示する政党がない。保守党と労働党、どちらが政権を取ろうと、離脱の見通しも英国経済の行く末も暗い。

議会任期固定法を骨抜きにして総選挙へ(写真=Jessica Taylor/UK Parliament/ロイター/アフロ)

 クリスマスが2週間後に迫る頃、英国各地の集会所では、冬の祭りや子どもたちによるキリスト降誕劇の予定が先延ばしされることになる。集会所がまたしても選挙の投票所として使われるからだ。

 英国が総選挙を実施するのは、この4年余りで3度目。欧州連合(EU)からどのように離脱するかについて、あるいは離脱(Brexit)そのものをすべきかについて、現在の国会では意見がまとまらなかったためだ。

 保守党を率いるボリス・ジョンソン首相は、過半数の議席を勝ち取って「離脱を成し遂げる」との公約を掲げる。野党労働党のジェレミー・コービン党首は、すべてを白紙に戻す選択肢を含む2度目の国民投票を提案する。

 これだけでも重大な選択だ。けれども、この「Brexit選挙」で問われるのは英欧関係だけではない。

 労働党内でも極めて左寄りのコービン党首は、英国経済を国主導にすると公約する。一方の保守党は、より自由な形の資本主義に向かおうとしているように見える。その上、首相になる可能性を持つこの2人はどちらも、連合王国を構成する4つの国(編集部注:イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドを指す)の絆を弱めてしまいそうなのだ。

 12月の総選挙は、過去数十年で最も重要な意味を持つ選挙になる。加えて、過去数十年で最も結果を予測し難い選挙でもある。世論調査の結果は揺れ動き、新しい党が勢力を強め、有権者の票を分ける考え方の軸も変わってきているからだ。

国民投票をやり直すべきだった

 本誌(英エコノミスト)はかねて、離脱をめぐる行き詰まりを打開するには2度目の国民投票をするのがよいと主張してきた。議会下院は、ジョンソン首相がEUとの間にまとめた離脱合意案を巡って真っ二つに割れている。恐らく致命的なほどにだ。テリーザ・メイ前首相がまとめた離脱案は今回の案よりむしろ優れたものだったが、それでも下院は合意できなかった。

日経ビジネス2019年11月11日号 138~139ページより目次