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携帯電話ブランドの「テクノ」はアフリカ各地で受け入れられており、その名を目にしない日はないほどだ。中国ブランドにもかかわらず、製品開発とマーケティングでアフリカ市場を最優先して事業を拡大している。アフリカ市場が持つ潜在成長力は大きい。モバイルインフラが整い、種々のサービスが生まれるフェーズに達した。

「テクノ」ブランドの携帯電話はSIMカードスロットを複数備えるなどアフリカのニーズを取り込んだ(写真=Bloomberg/Getty Images)

 「テクノ」という名のブランドがアフリカの至る所で存在感を示している。人と車がひしめく都市でも、急激な変化を遂げる町や村でも、同社のイメージカラーである青に塗られた建物が立ち並ぶ。広告掲示版はこのブランドの魅力を訴えかける。

 マリの首都バマコの市場からケニアはナイロビのビジネス街に至るまで、向上心が旺盛なアフリカ人たちの目にテクノの名称が入らない場所はない。ナイロビでは20階建てタワービルの壁一面にそのロゴが描かれている。

 頻繁にアフリカを訪ねる人でなければ、「テクノとは何だ」と思うことだろう。テクノは中国・深圳を拠点とする携帯電話メーカー、伝音科技(トランシオン)が展開するアフリカ向けブランドだ。同社は2006年の創立で、今年10月前半、「科創板(スター・マーケット)」への上場を果たした。同市場は米ナスダックに例えられるハイテク株式市場である。初日は初値の6割を超える高値で取引を終え、時価総額は約65億ドル(約7000億円)に達した。

 テクノの動向から、アフリカの現状と、世界との関係を徐々に深めている様子を知ることができる。トランシオンは昨年、1億台を超える携帯電話を販売した。人々が何を欲し、いくらでなら購入できるかを把握すれば利益が上げられることを同社は証明した。

 トランシオンは、競争の激しい中国市場で展開することなく、08年にアフリカ大陸に進出した。今後30年の間に人口が倍増するとされる未開拓地に的を絞った。

アフリカ市場の特性を知る

 まず、基本的な機能しかない従来型携帯電話を扱った。ナイジェリアとケニアに構えた研究センターで情報を収集し、アフリカ人のニーズに合わせた製品を開発した。

 トランシオン製携帯電話の多くはSIMカード用スロットを複数備えている。利用者は相手と同じプロバイダーを使って通話したり(料金が安い)、接続サービスの圏外になるのを避けたりすることができる。バッテリーの寿命も延ばした。頻繁に停電のある地域に住む人たちにとって不可欠な要素だ。また、端末はアムハラ語やスワヒリ語*1などの言語に対応している。