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米FRBは9月17日、ほぼ10年ぶりに短期金融市場に介入した。レポ金利が急上昇したのが引き金となった。市場はすぐに安定を取り戻したが、資金が逼迫する事態が今後も想定される。経済成長が続き財政赤字が拡大する中で、資産を縮小してきたFRBは岐路に立たされる。

逼迫する資金
出所:The Economist/ニューヨーク連銀/Datastream from Refinitiv

 米連邦準備理事会(FRB)は9月17~18日に会合を開き、政策金利について検討した。その準備段階からFRBは数々の悩ましい状況を抱えていた。貿易摩擦が激化し、世界経済が減速する中で、米国企業は今年4~6月期に投資を縮小させた。製造業の生産と設備稼働率は2018年末から低下の一途をたどる。FRBは、雇用の拡大は「堅調」としてきたが、労働市場は不安定化していると懸念するアナリストもいる。

 こうした懸念をもとに、FRBは予想通り今年2度目の利下げを決め、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25ポイント引き下げて1.75~2.00%とした。しかし、この会合に何より大きな影を落としていたのは金融市場の混乱だった。

 FRBは9月17日、ほぼ10年ぶりに短期金融市場に資金を供給した。銀行間の借入金利であるFF金利が、FRBが定める誘導目標の上限を超えて上昇したため、介入が必要になった。

 FF金利が上昇したのは、この日「レポ金利」(米国債など低リスク証券を一時的に現金化する際の金利)が一時10%にまで達したためだ。FRBは即日、翌日物レポ取引で750億ドル(約8兆1000億円)を上限に資金を供給。銀行はそのうち530億ドル(約5兆7000億円)を手にした。FRBはその後も2日続けて750億ドルの資金を供給し、銀行はそれを全額受け入れた。

資金逼迫にどう対処するか

 これは背筋が寒くなるような展開だった。というのは、レポ金利の急上昇はこれまで金融危機の前触れだったからだ。07年に市場参加者が住宅ローン担保証券の優良性に疑いを抱き始めた時、貸し手が資金を出し渋るようになり、やはりレポ金利が急騰した。

 今回のレポ金利の急上昇がこうした疑念から生じた可能性は低い。現在のレポ取引で担保とされるのは低リスクの米国債がほとんどだからだ。それでも懸念すべき理由はある。米国の銀行や企業で手元資金が逼迫していると思われるのだ。

 また、レポ金利は混乱の中でFF金利と連動しなくなってしまった。金融政策は経済に影響力を働かせるのに、この2つの金利の連動を主に利用する。レポ金利の値がFF金利から乖離すると、FRBは最も重要な政策の仕組みを失うことになる。

日経ビジネス2019年9月30日号 116~117ページより目次