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欧州経済が景気後退に向かいつつある中、欧州中央銀行(ECB)にできることには限界がある。通貨ユーロに対応する統一的財政政策を立てられないという根本的問題が解決されていないからだ。ユーロの恩恵を最も大きく受けているドイツが、欧州の未来のために、財政出動すべきだ。

退任間近のマリオ・ドラギECB総裁は、金融危機後の金融規制制度の再構築に尽力し、通貨ユーロの信認を守った(写真=ユニフォトプレス)

 陽光きらめくイタリアのコモ湖畔にて、9月上旬に開かれたアンブロセッティ経済フォーラムには、欧州各国の政策立案者たちが集まった。ここで筆者が聞いた話題は主に3つある。

 1つは、ユーロ圏経済の沈滞が景気後退の前触れとなる危険性が高いということ。もう1つは、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和策は救済措置として不可欠であるが、十分ではないということ。そして最後に、ドイツは欧州経済がよほど傾かない限り、財政刺激策に踏み切らないだろうということだった。英国の欧州連合(EU)離脱は、決して歓迎される事態ではないが、主要な問題にはされなかった。

 退任間近のマリオ・ドラギECB総裁は、すでに欧州の偉人の1人に数えられている。2008年の金融危機の後、ドラギ総裁が金融規制の再構築を前向きに進めたおかげで、通貨ユーロは救われた。仮にこの単一通貨が崩壊していたら、戦後進められてきた欧州統合の仕組みの多くが崩壊していただろう。金融危機に直面し、なすすべもなく手をこまねいていた各国の政治家は、ドラギ総裁に大いに感謝すべきだ。

 ドラギ総裁の基本戦略は、12年の夏に語られた次の言葉にすべて込められている。「ECBはユーロを維持するために、認められた範囲内でできることはすべてする覚悟だ。信じてほしい。それで十分なはずだ」。実際、同総裁の鋼のような信念で、十分にユーロを守ることができたのだ。