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米国務省のイラン政策トップが、拿捕(だほ)されたイランタンカーの船長にメールを送り、“投降”を呼び掛けていた。「数百万ドルの報酬を提供する。さもなければ、制裁を科す」という厳しい選択を求めた。米国によるイラン包囲網は、他の船員、船会社、港、船籍を提供するパナマにも及ぶ。

英領ジブラルタル、解放されたイランのタンカーが出航(写真=ロイター/アフロ)

 シリアに原油を輸送する疑いがあるとして、米国はイランのタンカーに対し制裁を発動した。この4日前、同タンカーの指揮を執るインド人船長、アクヒレシュ・クマール氏は米国務省でイラン政策を統括する特別代表、ブライアン・フック氏から異例の電子メールを受け取った。フック氏は同省内に新設された「イラン行動グループ」の責任者を務める。

 本紙(英フィナンシャル・タイムズ)が目にしたいくつかの電子メールによれば、フック氏は8月26日、クマール氏に対し次のメールを書いた。「私はマイク・ポンペオ米国務長官の下で、イランに対する代表を務めているブライアン・フックです」「良いニュースがあります」

 良いニュースとは、もしクマール氏がタンカーを、米国に代わって押収する国まで航行するなら、トランプ政権は数百万ドル(数億円)の報酬を与えるというもの。この船は最近まで「グレース1」と呼ばれていた。

 クマール氏がこのメールを詐欺メールと間違えないように、メールには国務省の公式電話番号が記載された。

 フック氏ほど高い地位にある官僚が船長に直接働きかける異例の行動に出たのは、これが唯一のケースではない。フック氏は過去数カ月の間に同様の電子メールやショートメッセージをおよそ12人の船長たちに送っている。イランの制裁逃れを手助けすれば重い代償を支払わなければならないと、彼らに思い知らせる取り組みの一環だ。

イランの資金源を断つ

 フック氏は本紙に対し「イランに対する我々の圧力が成功するかどうかは、原油輸出に対する厳しい制裁を実行できるかどうかにかかっている。イランはこのことを理解している」と語った。「我々は短期間のうちにイランの原油輸出を壊滅状態に追い込んだ。海運関係者と極めて緊密に協力し、不法な原油輸出を混乱させ、阻止すべく努力している」