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ネパールの大富豪、ビノド・チャウダリ氏がモバイル通信事業に乗り出すに当たって、華為技術製品を選んだ。米国が華為技術に厳しい姿勢を示す中、同氏の新事業は米中の技術冷戦に巻き込まれるリスクを伴う。ただし同氏は楽観的だ。「政治の局面は頻繁に変わる」と見る。

ビノド・チャウダリ氏はまず4Gのサービスから始める計画だ(写真=NurPhoto/Getty Images)

 ネパールでただ一人の億万長者であるビノド・チャウダリ氏は、「マサラ・デライト」や「チキンピザ」といった風味のインスタント麺を売って財を成した。米経済誌フォーブスによればその資産は17億ドル(約1800億円)に及ぶ。

 そのチャウダリ氏が、中国通信機器最大手である華為技術(ファーウェイ)と結んで、母国に新たな通信ネットワークを構築する。さらに、世界レベルの競争に名乗りを上げた。

 同氏が経営するチャウダリグループは銀行業からタバコに至る様々な事業を展開するコングロマリットだ。今回の通信事業への参入では、次世代規格5Gに参入する前に、まず4G規格にのっとったモバイル通信サービスを展開する。ファーウェイ製の機器を購入するほか、トルコのモバイル会社タークセルと提携し世界規模の事業を目指す。

 チャウダリ氏は一連の動きにより、米中が激突するテクノロジーの冷戦に巻き込まれるリスクを冒すことになる。5G通信網が普及する直前のこの時期に米国は、ファーウェイ製品がスパイ活動に用いられるとし、同社製品の使用を避けるよう企業に積極的に働きかけている。

 人口18億人に上る南アジアでファーウェイが勢力を伸ばす動きに人々の視線が集まっている。インドと中国に挟まれた人口約3000万のネパールは、南アジアの覇権争いにおける戦略的なポイントだ。

政治の風向きはすぐに変わる

 とはいえ、チャウダリ氏は楽観的な見方を示す。「政治の局面は頻繁に変わる。それに比べてビジネスは永続的なものだ」と本紙(英フィナンシャル・タイムズ)に語った。「ドナルド・トランプ米大統領が『中国の習近平国家主席との関係は申し分ない』と言う日もあるだろう。そして状況はまた変化する」

 5Gは交通から家庭までさまざまな分野で広く使われるようになると予想されている。つまり、ハッキングの標的になりかねない膨大なデータを生成する。米国にとって、5G技術の開発において中国に対し優位を保つことは国家の安全を保持するために不可欠なのだ。