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ニュージーランド乳業最大手のフォンテラが8月、8億NZドルを超える評価損を計上すると明らかにした。NZを中心とする標準的な乳製品の業者から、ネスレなどに伍(ご)す世界企業への飛躍を目指したが頓挫した。新たな経営方針を9月に発表する予定だが、それを待つことなく酪農家の一部が取引をやめ始めた。

フォンテラ製乳製品は、NZの輸出の4分の1を占める(写真=左:AFP/アフロ、右:ロイター/アフロ)

 ニュージーランド(NZ)乳業最大手フォンテラが、記録的な損失と戦略の見直しを報告する準備を進めている。その一方で、保守的かつ我慢強いことで知られるNZの酪農家から経営責任を取るよう求める声が上がる。

 太平洋に浮かぶ同国の北島、タラナキ地方で1200頭の牛を飼育するギャビン・フォール氏はこう語る。「フォンテラが設立されて以来、忠実な供給業者として苦楽を共にしてきた。だが大金を失った。いったいなぜこのようなことになったのか。農民の誰もが疑問を感じているはずだ」

 フォンテラは2001年、NZの酪農家の利益を代表する「全国的な守護者」として設立された。組織としては協同組合の形を取る。世界をまたにかける大手加工乳メーカーに成長し、NZだけでなくオーストラリア、中国、中南米でビジネスを展開する。世界の牛乳輸出のほぼ3分の1を供給。中でも中国事業は大きく、18年の収入204億NZドル(約1兆4000億円)の約5分の1を生み出す。

 フォンテラの衰退により、同社の株を保有する1万人の農家も被害を受けた。同社の評判は急落し、企業戦略と体制が疑問視される事態に陥っている。

大きすぎた野心と投資の失敗

 同社は8月、中国、オーストラリア、ベネズエラ、ブラジル、NZでの事業を対象に総額8億2000万NZドル(約550億円)の評価損を計上すると発表した。74億NZドル(約5000億円)に及ぶ債務の返済に苦しんでおり、初めて年間配当を支払えなくなる見通しだ。

 その数日後には、状況がさらに悪化した。CEO(最高経営責任者)を務めたセオ・スピアリングス氏が職を退く時点で470万NZドルの給与とボーナスを受け取っていたことを同社が明らかにしたからだ。同氏は1年前、大規模な経営問題が表面化したのを受けて辞任した。