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かつて秘密主義だったファーウェイが、米国からの非難をかわそうと、情報公開に積極的になっている。スパイに利用させるバックドアを仕掛ける決まりなどなく、情報機関への協力も国外では必要ないという。信頼の欠如を前提とした製品を開発するというのなら説得力もあるが、共産党の下では不可能だろう。

欧州の宮殿や大邸宅を模した建物が並ぶ、ファーウェイの研究開発拠点。川の左岸にサイの群れが見える(写真=ロイター/アフロ)

 中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の新しい研究所は、とても風変わりな施設だ。いろいろ考え合わせても、ある委員会が、それも灰色のスーツに身を包んだ中国共産党の政治委員が指導する委員会がこのような奇妙なものを設計できたとしたら、それは信じ難いことに思える。

 この施設は、欧州各地の都市を模して造った12の「街」でできている。中国南部、東莞市近くの緑豊かな亜熱帯の丘陵地帯に、その街々は広がる。小塔のあるドイツ風の城やスペイン風の大邸宅、イタリア風の宮殿など多様な建物の中で、1万8000人の科学者や設計技師などの研究員が働く。それぞれの街は線路で結ばれ、レトロな赤い列車が走っている。

 社員食堂には、イタリアのブランド「イリー」が営むエスプレッソバルやフレンチのビストロがある。偽ベローナと模造ハイデルベルクを隔てる川の岸辺では、ブロンズ製のサイの群れが草をはんでいる。

 ファーウェイは数カ月前から、この施設を見学対象に含む会社紹介ツアーを海外のジャーナリスト向けに始めた。その理由は容易に推測できる。印象的で、常識を越えていて、少しばかり野暮なこの研究施設は、あることを示唆する証拠の一端なのだ。

 そのあることとは、ファーウェイは、少なくともアーキテクチャーの決定に関する限り、自ら主張しているとおりの存在、つまり、億万長者の創立者である任正非氏の野心と奇才に導かれた一民間企業だということだ。任氏は人民解放軍で技官を務めた経験を持つ、欧州好きの歴史マニアでもある。

情報公開に方向転換

 ファーウェイは過去30年にわたりほぼ常に、情報公開を避けてきた。ところが今では、世界でも指折りの発信好きなハイテク企業となった。以前は門を閉ざしていた研究所やスマートフォンの組み立て工場にもジャーナリストを招いている。同社が、開放路線にかじを切った理由は明白だ。米トランプ政権の高官や米議会の議員から非難を受けているからである。

 ファーウェイが2018年に全世界で稼ぎ出した売上高は7200億元(約11兆円)を超える。米政府の高官らは、同社は中国国家が様々な形で所有し、補助金を提供し、あるいは少なくとも支配していると主張する。何より、軍や情報機関と緊密な関係にあることを問題視する。また同社が、米国をはじめとする他国の競合企業が開発した技術を盗用しているとも訴えている。

 ファーウェイ自身は、同社は合法的な持ち株組合を通じて従業員が所有する企業であり、同社内で活動する共産党の委員会は社員の教育と福利を担当するだけで悪意を持つものではないと主張する。米国の高官らはこの主張を一笑に付している。