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日本が、韓国半導体業界が必要とする化学物質への輸出規制を強化すると発表。韓国側が反発している。日本政府は慰安婦問題や徴用工訴訟問題とは無関係と主張するが、英エコノミストは冷ややかだ。両国民の間で互いに不信感が高まり、安倍首相も文大統領も簡単には引き下がれそうにない。

徴用工像の前で、「戦犯企業」製品の不買を訴える(写真=YONHAP NEWS/アフロ)

 日本と韓国は共に、この地域では珍しい完全な民主主義国家だ。歴史的にも文化的にも共有するものがある。何より両国とも、緊張の高まるこの地域における米国の重要な同盟国だ。にもかかわらず、日本と韓国は互いに友好国というよりも敵国のように振る舞っている。

 日本は7月1日、半導体やスマートフォンの製造に不可欠なフッ化水素など3種の化学物質について、韓国への輸出に対する規制を厳格化する措置を取った。これにより、両国の対立は一気に激しさを増した。韓国がこれらの化学物質を日本から輸入する規模は比較的小さく、年間4億ドル(約430億円)程度にすぎない。しかし日本に代わる仕入れ先があまりないため、世界的なサプライチェーンに大きな影響が及ぶ可能性がある。

 日本政府が取った措置に対して韓国の人々は、憎しみを感じつつ反応した。著名人たちは、キャンセルした日本行きの航空券をインスタグラム上で誇示。日本車には引っかき傷が付けられた。商店主たちは日本製品の取り扱いを中止する運動を始めた。日本ブランドには「戦争犯罪人製」というラベルを付けるべきだと発言する政治家も出てきた。

尾を引く歴史認識問題

 争点はいつもと同じ、歴史を巡る不快で厄介な問題だ。20世紀の前半、日本は朝鮮半島を植民地として支配した。帝国時代の日本は経済面において韓国に近代化をもたらしたが、同時に残忍な統治も行った。特に1937~45年に太平洋地域で行われた全面戦争*1の間の統治は過酷だった。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は左寄りで、その歴史観により自らを特徴づけようとしてきた面がある。日本統治下において日本に協力したとみられる韓国人の銅像を撤去し、彼らの名前にちなんで付けられた街路の名称を変更した。

 2018年には、保守派の朴槿恵(パク・クネ)前大統領と日本の安倍晋三首相とが結んだ「慰安婦」合意──戦時下で起きた慰安婦問題の最終的解決を図って結ばれた合意──を事実上破棄した。慰安婦とは、日本軍の「慰安所」で性行為を強要された*1人々のこと。数万人の韓国人慰安婦のうち、現在も存命中の人々がわずかながらいる。

日経ビジネス2019年7月29日号 128~129ページより目次