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米中の貿易戦争は、貿易の枠を超え、投資やサプライチェーンに拡大している。想定される次の舞台は為替と金融だ。元安に対応しなければ、米国は中国を為替操作国に認定するかもしれない。米国が、国際決済サービスから中国を締め出す事態も想定される。中国が取り得る防衛策とは。

余 永定(Yu Yongding)氏
中国社会科学院世界経済政治研究所の元所長。中国人民銀行の元金融政策委員であり、同国の主要エコノミストの一人。マクロ経済や世界金融に関する論文や著書を多数発表している。

 米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席は、6月28~29日にかけて大阪で行われた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の場で、貿易交渉を再開すると合意したかもしれない。だが両国が火花を散らす貿易戦争が終結に至るまでの道筋は不透明なままだ。

米中は協議再開を決めたが、緊張緩和への道筋は見えない(写真=AFP/アフロ)

 両首脳は、2018年11月にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催された前回のG20サミットでも似たような合意に至ったが、協議は最終的に決裂した。その主な原因は、中国が見せた歩み寄りの姿勢を弱気の表れだとトランプ大統領が誤解したことにあった。

 トランプ大統領が今回も同じ間違いを犯すかどうか、それはまだ分からない。いずれにしても、この貿易戦争が向こう数カ月もしくは数年の間どう展開するか、中国は自衛のため何ができるのか、は一考に値する。

 中国からの輸入品に米国が課した関税は当分の間、このまま据え置かれるかもしれない。さらなる引き上げも解除もないままにだ。大阪サミットでの合意によりトランプ大統領は、中国からの輸入3000億ドル(約32兆3000億円)分に対する追加関税を発動できなくなった。

 だがこの合意は、トランプ政権が行った15%の関税引き上げ(対象は中国からの輸入2000億ドル=約21兆5000億円=分。これにより関税は25%となった)など、過去に発動した措置を無効にするものではない。トランプ政権はこの追加関税を、一連の協議が5月に決裂した後に実施している。

 こうした関税が中国経済に直ちに深刻な事態を招くわけではない。けれども、その影響は徐々に強まるだろう。中国は、これまでの関税を撤廃するよう米国への説得を試みる可能性が高い。少なくとも、税率をこれ以上引き上げないよう働きかけるだろう。中国側が追加関税で応戦しなければの話だが。

日経ビジネス2019年7月29日号 126~127ページより目次