全3401文字

子弟を米国に留学させたい中国エリート層にとって、米国のビザ審査基準の厳格化は懸念材料だ。中国当局はこうしたエリート層の不安を逆手に取り、米国は中国に嫌がらせをしていると情報操作に余念がない。米政府は何も語らないが「開かれた社会」を強みに発展した米国にとって、こうした動きは悪影響を及ぼしかねない。

中国人留学生が差別の対象になっていると中国側は主張している(写真は2019年米ハーバード大学の卒業式)(写真=ロイター/アフロ)

 ころころと変わる方針や、相反する政策発表──。そんな「トランプ流」に翻弄される中国のエリート層にとって、米国は何を期待していいか分からない国になりつつある。だが、彼らには1つだけ確信していることがある。ドナルド・トランプ米大統領が中国を押さえ付けるために乗り出した人種差別的な計画の中に、中国エリート層の子女たちが標的にされているものが存在するということだ。

 はたから見ると、中国から米国に留学している約36万人の若者が、査証(ビザ)の取得ルールの厳格化で苦労していたり、大学構内でスパイ検挙にあたる米連邦捜査局(FBI)局員の不公正な監視の対象になっていたりすることで気をもむのは奇妙に映るかもしれない。

 米中間の貿易戦争においても、何十億ドルにも相当する関税が先行きの見えない状態に置かれている。中国が「悲願」に掲げる技術大国を目指す上で欠かせない中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を、米国が本気で潰しにかかるかどうかも、トランプ氏の今後の交渉のやり方次第だ。

 それでも中国当局者が欧米人と顔を合わせると、個人的な問題であるにもかかわらず、米国にいる中国の学生や学者に対する政府の扱いを何とかしてほしいという話が繰り返し話題となる。

日経ビジネス2019年7月22日号 90~91ページより目次