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米国の景気は121カ月連続で拡大し、1854年に統計を取り始めて以降、最長になろうとしている。これまでの景気拡大期と異なり成長が緩やかなことが特徴だが、背景には経済活動の質的な変化がある。景気後退局面へ移る際においても、産業、金融、政治の各分野で今までとは違う種類のリスクに見舞われかねない。

低成長ながらも、緩やかな景気拡大が続いているが・・・・・・(写真=The New York Times/アフロ)

 世界中の投資家、企業、中央銀行が、一つの驚くべき事実に向き合おうとしている。米国の景気局面を認定する全米経済研究所(NBER)によると、この7月末で米国経済の拡大が121カ月連続となり、1854年に統計を取り始めて以降、最長を記録するという。

 歴史の法則に従えば、景気は遠からず後退局面に入るはずだ。暗い予想をする人々は多い。長期金利が短期金利を下回る状態にあることからも分かるように、債券市場は警報を発している。この状態は不況の前触れであることが多い。製造業も警戒感を示している。企業の景況感指数は急落した。

 その一方で、株式市場の活気は現在も続いている。株価は年初から19%上昇した。また、米国経済は6月に22万4000人という大幅な雇用増を生んだ。労働力の拡大に合わせるために必要とされる雇用の2倍以上だ。

 こうして見ると、米国経済の現状は不可解だ。この謎が持つ意味は大きい。世界経済の4分の1を占める米国経済がつまずけば世界もつまずく。逆に米国の好況期がさらに続くようなら、世界の先進国は、取るべき行動を変えなければならないのかもしれない。

日経ビジネス2019年7月22日号 86~87ページより目次