全3150文字

トランプ米大統領が、再選に向け選挙活動を開始した。争点となるのは米国がよって立つ文化であり価値観であり、理念だ。同氏は、民主党候補が同氏に反発するよう仕向ける。彼らがリベラルに傾くほど、中道の選挙民との距離が開く。

筆者は、クリントン氏(左)とコミー氏がトランプ氏の勝利を招いたと見る(写真=左:AP/アフロ、右:ロイター/アフロ)

 不慮の事故というものは立て続けに起こるものではない。だが2016年の米大統領選でドナルド・トランプ氏を利することになった“落雷”は1つどころではなかった。

 対立候補のヒラリー・クリントン氏は、目の敵にされていたワシントン政治の世界から抜け出してきたような人物だった。米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官(当時)は捜査官としてまれに見る無能ぶりを発揮し、投票日の直前に介入して選挙結果を大きく左右した。

 大統領選挙人制度もトランプ氏の勝利に“貢献”した。トランプ氏は得票総数では負けていたにもかかわらず、この制度のおかげで当選した。また、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による大統領選介入では、SNS(交流サイト)のフェイスブックがこの上ないプラットフォームの役割を果たした。

 以上のうち、20年に予定される次期大統領選で再び起きそうなものは何一つない。少なくとも前と同じ形では起きないだろう。

 それでもトランプ氏は「歴史は繰り返す」と確信している。同氏は6月18日に再選キャンペーンを開始。この日の集会は、16年に行った集会と異なるところがほとんどなかった。前回と同様、ヒラリー・クリントン氏に対する「閉じ込めろ」の大合唱すら巻き起こった。

争点は「文化」

 トランプ氏は米国経済が不正に操作されていると非難するのではなく、米経済はかつてないほど繁栄していると豪語する。「米国を再び偉大に(“Make America Great Again”)」に代わるスローガンは「米国を偉大なままに(“Keep America Great”)」だ。こうした通り一遍の変化を除けば、風景は、以前に見たものと同じだった。

 トランプ氏の策略が成功するかどうかは誰にも見当がつかない。特に世論調査の結果はほとんどあてにならないだろう。トランプ氏と、想定される民主党の大統領候補とのいわゆるマッチアップ調査は、現時点では机上の空論である部分が大きい。

日経ビジネス2019年7月1日号 92~93ページより目次