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6月13日、日本企業などが運航するタンカーがホルムズ海峡周辺で何者かに攻撃を受けた。これを契機に、船舶に乗り込む警備員への需要が急拡大している。軍の特殊部隊などで経験を積んだ専門家だ。ただし、彼らはもともと、海賊対処を想定している。実行犯が明確でない今、対応は一筋縄ではいかない。

タンカー攻撃の実行犯はいまだ特定されていない(写真=ISNA/AP/アフロ)

 ソマリア沖で活動する海賊をかわすことと、イラン革命防衛隊とぶつかることとは、全く別の話だ。

 6月13日、オマーン湾を航行中のタンカーが襲撃された。海事警備業界は、この事態に驚愕(きょうがく)した海運会社からの需要急増に沸き立った。米国と英国は、攻撃はイランによるものだと非難している。

 「我々は事態に対処すべく全力で努めており、13日以降、70人の警備員を増員した」。英海事警備会社アムブリーの共同創業者、ジョン・トンプソン氏はこう話す。同社は過去10年で、船舶に乗り込む警備員の派遣会社として世界最大手となった。同氏は、同社が受けた問い合わせ件数に基づき、船舶に派遣する警備員の数が今後数週の間に約25%増加するとみている。

 キプロスに本社を置く警備会社、ディアプロースのCCO(最高商務責任者)、ディミトリス・マニアティス氏は、オマーン湾を航行する船舶への警備員の要請は「12%増加」したという。

 海事警備業界はここ数年、厳しい時期を過ごしてきた。アフリカの角の沖合で活動する海賊が減少する傾向にあった。低賃金労働者の流入に伴って契約額も低下した。引き合いが増えるのは歓迎すべき展開だ。

 3~4人の警備員で構成するチームを12日間の航海につかせる費用は、ピーク時には4万ドルだった。それが現在は半分を大幅に下回る水準に下落している。業界のある幹部は、以前の料金は「持続不可能だった」と指摘する。この幹部によれば、今や海事警備は「ありきたりのサービス」になったという。

ネパール人も海事警備員に

 S-RMのパトリック・ロジャーズ氏は「昔と違って、海事警備は華々しい仕事ではない」と話す。同社は多数の大手海運会社に危機に関する助言を提供している。

 この10年間に、ソマリア沖で海賊に襲撃される事件は特殊なことではなくなり、警備員を派遣する会社が急増した。貨物船「マースク・アラバマ号」が乗っ取られた事件がトム・ハンクス氏の主演で映画化されたのもこの流れの中にある。

日経ビジネス2019年7月1日号 88~89ページより目次