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米ウーバーが構想する、ヘリコプターを使用した都市交通の詳細が明らかになりつつある。マンハッタンからJFK空港を30分で結ぶもので、近く、複数都市で試験飛行が行われるという。だが、安全性や騒音などの観点から大都市での電動飛行サービスは実現が難しいと筆者は考える。

ウーバーコプターは、マンハッタンとJFK空港を8分で結ぶ(写真=Becky Katz Davis/Uber/AFP/アフロ)

 1982年に公開されたSF映画、「ブレードランナー」の冒頭のシーンをご存じだろうか。主人公のリック・デッカードが、空飛ぶパトロールカーで、ロサンゼルスの摩天楼を見降ろしているシーンである。その一角には、今はなきパンアメリカン航空のネオンが輝いている。マンハッタンにかつて存在した、パンアメリカンの本社ビルからジョン・F・ケネディ(JFK)国際空港までは、ヘリコプターで一っ飛びだ。

 都会の移動手段はまるで映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の世界になろうとしている。配車サービス大手の米ウーバー・テクノロジーズは、2023年までに「ウーバーエア」と呼ばれる航空機を用いた移動サービスを開始する目標を掲げている。6月11日に行われた同社の開発者会議において、幹部の一人は「これまでベールに包まれてきた空飛ぶタクシーの全貌が、もうすぐ明らかになる」と答えた。会議では、マンハッタンからJFK空港まで乗客をヘリコプターで8分で運ぶ新しいサービス「ウーバーコプター」の詳細も明らかにされた。

 ウーバーはウーバーエアの試験航行を米ダラス、米ロサンゼルス、豪メルボルンで実施する。一方、独ミュンヘンにて電動飛行機の開発を行うスタートアップ企業、リリウムは、英ロンドンで数百人のソフトウエア・エンジニアを雇う計画だ。リリウムの手がける電動飛行機は36個の電気ジェットエンジンを搭載する。エンジンやバッテリーの進化で、映画でデッカードが行った飛行機による短距離移動が可能になろうとしている。だが問題は、それが望ましいものであるかどうかだ。

過去には失敗したケースも

 電動飛行機の開発は、長距離飛行において航空機が排出する二酸化炭素量を削減する観点から、間違いなく意味あるものだ。だが、長距離飛行の実現はだいぶ先の話になるだろう。一方で、近い将来、実用化が見込まれる短距離の空飛ぶタクシーは、数人の客を乗せて町中を飛び回る。これでは渋滞を解消するどころか、空に騒音をまき散らすことになるのではないか。

 大空を飛び回るというビジョンは、投資家の興奮をかき立てる魅力あるものだが、過去を見ると往々にして失敗が目立つ。00年代半ば、超軽量ジェット機(VLJ)によるオンデマンドフライトの夢をかなえるため、米デイジェットや米ポゴジェットなど、いくつかのスタートアップが、「エクリプス 500」などの航空機を大量に発注した。だが結局は倒産してしまっている。

日経ビジネス2019年6月24日号 96~97ページより目次