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サントリーは今年3月、5年前に買収した米ビームとの統合を完了したと宣言した。企業文化の違いを乗り越え、「ビームサントリー」として方向性を定めるまでに多くの衝突があった。今後は、新興市場への投資や米国の大麻ブームへの対応などが課題となる。

ミレニアル世代の行動様式に合わせるべく高級化を進めている(写真=左:AP/アフロ、右:ロイター/アフロ)

 サントリーホールディングスの新浪剛史社長は3月上旬、米蒸留酒大手ビームとの統合完了を宣言した。同時に、日本のウイスキーブレンディング技術を活用しビームと共同開発したバーボンの新製品「リージェント」も発表した。サントリーは創業120年になる酒造メーカーで、「山崎」や「白州」などのウイスキーで知られる。

 サントリーがビームを160億ドルで買収してから5年。米国子会社ビームサントリー(以下ビーム)の売上高は、高級蒸留酒の世界的ブームに乗って40億ドル(約4300億円)へと倍増した。ビームの成長に後押しされ、親会社サントリーも純負債を150億ドル(約1兆6000億円)から100億ドル(約1兆1000億円)へと削減できた。

 過去10年間ビームを率いてきたマット・シャトック氏が4月にCEO(最高経営責任者)を退任した。サントリーとビームの統合がもたらした荒波を耐え抜いた同氏は、この間に自分は「別のリーダー」に生まれ変わったという。米国子会社の経営者が代わったことで、 サントリーも新たな時代に歩みを進めることになる。

 これで苦難の移行期が終わった。両社はこの間、企業文化と戦略的方針を巡り衝突を繰り返し、主要幹部の退任でさらに揺れ動いた。それに拍車をかけるように、世界的な人気の高まりで日本産ウイスキーが深刻な品不足に陥った。

 シャトック氏は「異なる会社を統合して1つにするのは容易なことではない。しかし、我々が成功に向けて取ってきた行動がついに、持続的で長期的な成長をもたらしつつある」と語る。

 サントリーは売上高で世界第3位の蒸留酒メーカーとなった。しかし、大麻の合法化が拡大することで生じる大きな混乱に酒造業界全体が身構える中、経営幹部やアナリストは、同社がさらなる困難に直面するかもしれないと警告する。

 ビームに新CEOを据えたサントリーは、日本で目減りする利益を穴埋めすべく新興市場でのシェアを高めようとしている。その途上で英ディアジオと仏ペルノ・リカールという2大メーカーと対決することになる。「大手との戦いは避けられない。急ぐ必要がある」と新浪社長は語る。

日経ビジネス2019年6月17日号 80~81ページより目次