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配車サービスの規模は拡大しているが、関連企業の業績は黒字化されず、資金繰りはいまだ投資家頼みだ。環境コストを負担しない一般ドライバーも事実上の「フリーライダー」で、公的補助の恩恵を受けているに等しい。公的補助を止め、混雑度に応じて道路を有料化すれば交通量が抑えられ、配車サービスの収益も改善するだろう。

ウーバーの顧客基盤は拡大するも、業績はいまだ赤字だ(写真=UPI/アフロ)

 米配車サービス大手ウーバーテクノロジーズが5月10日に上場した。IT(情報技術)企業としては記録的な規模の上場となる。だが、この上場前からのお祭り騒ぎは、同社の将来を覆う不安要因を拭い去ることはできない。

 ここ数年で配車サービス各社は急成長を遂げ、都市交通の様相を変えつつある。その一方で彼らは、見事なほど資金を失ってきた。米リフトは2018年に10億ドル(約1100億円)近い営業赤字を出した。ウーバーは約30億ドル(約3300億円)の赤字だ。この赤字の垂れ流しが主に意味するのは、投資家が利用者に事実上の「補助金」を与えているという実態だ。その補助金のおかげで、一般の利用者は、あたかも意のままに使えるマイカーを所有しているような気分を味わえている。

 この状況は続かないだろう。しかし、厳しい状況に直面するのはウーバーの利用者だけではない。自動車に関連するあらゆる補助金の維持が難しくなっているのだ。配車サービスの赤字は、1人だけでクルマに乗ることが、いずれ多くの人の手に届かないぜいたくになるであろう事実をあぶり出しているのかもしれない。

 自動車と利用者を結びつけるITプラットフォームを熱狂的に支持する人々は、これを利用すれば配車サービスを重要な都市交通インフラとして位置づけられると考えている。このサービスのおかげで恐らく何百万という人々が、ほとんど使わない自家用車を保有するコストから解放される。乗り物や道路はこれまでよりもずっと効率的に利用されるようになる。

 しかし、配車サービスの規模は拡大しているとはいえ、提供企業の業績はいまだ黒字化していない。ウーバーをはじめとする配車サービス企業が、現在の事業を維持するには、走行距離当たりの売り上げを増やさねばならない。

 サービス使用料を上げるという手はあった。しかし、利用者を拡大していくには、安さという条件は絶対に欠かせない。いずれかの配車サービス企業が市場をどれほど支配したとしても、競合する移動手段はなくならないからだ。自家用車もあれば公共交通機関もある。2本の足で歩くという手段もある。配車サービスの料金が上がれば、こうした代替手段の優位性は高まる。

 各社は走行距離当たりのコストを下げる方向に向かうこともできるだろう。そのとき一番切り詰められるのが、ドライバーへの支払いだ。実際ウーバーは無人タクシーの開発に力を注いでいる(米ウェイモや米テスラも同様の努力をしている)。しかしそれでも黒字化は難しいだろう。

乗客いなくてもコストはかかる

 マサチューセッツ工科大学(MIT)のアシュリー・ニューネス氏と圧力団体「米国の将来のエネルギーを確保する会(SAFE)」のクリステン・ヘルナンデス氏が最近行った分析によると、自家用車のコスト(保有コストのほか燃料代や駐車場代を含む)は1マイル当たり約0.72ドル(1km当たり約49円)。一方、無人タクシー事業者の損益分岐点となる利用料金は1マイル当たり1.31ドル(1km当たり約90円)と見積もられるという。タクシーは乗客を乗せていてもいなくても営業中はガソリン代などのコストが積み上がっていく。また、無人タクシーは安全上の理由から、人間を使ったタクシー監視体制を整備する必要があり、そのスタッフの給料も配車サービス利用料に含めなければならない。

日経ビジネス2019年5月20日号 92~93ページより目次