全3299文字

ニールセン米国土安全保障長官が解任され、トランプ米大統領の「負の遺産」がまた増えた。差別主義的な発言やモラルなき政策は言わずもがな、懸念すべきは法律や個人の自由、平等を尊重しない姿勢だ。米国の経済的繁栄はこうした思想のもと成立していただけに、裁判所や教育機関への圧力は憂慮すべき事態である。

ジョセフ・スティグリッツ氏
1943年米国生まれ。米アマースト大学卒、67年米マサチューセッツ工科大学で経済博士号取得。95~97年クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長、97~2000年世界銀行のチーフエコノミスト。01年にノーベル経済学賞受賞。現在は米コロンビア大学教授。
ニールセン米国土安全保障長官は、トランプ大統領の国境政策をめぐる無謀な要求に応えきれず、職を辞したといわれている(写真=ロイター/アフロ)

 キルステン・ニールセン米国土安全保障長官が解任されたが、それをそのまま喜んではならない。確かにニールセン氏は国境で移民家族をバラバラにする政策を取り仕切った。金網で仕切られた檻のような施設に幼い子供たちを収容したこともよく知られている。

 だがニールセン氏が長官の職を辞したとて状況は改善しそうにない。なぜならドナルド・トランプ大統領は自らの反移民政策をより無慈悲に遂行する人物を後釜に据えようとしているからだ。トランプ大統領の移民政策は、あらゆる観点からしてひどいものだ。だが、この政権が抱える最大の汚点とはいえないかもしれない。