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欧州連合(EU)は、「主権を脅かすリスクから欧州とその市民を守る」という方向に政策を転じつつある。英離脱問題をきっかけに、EUの存続を脅かす思想を市民にもたせまいとする認識が広まったためだ。だが過度な保護主義に偏りすぎると市場開放という繁栄の基盤が失われるだけに、注意は必要だ。

EUの中心、フランスとドイツも保護主義的な政策を相次いで打ち出している(写真=ロイター/アフロ)

 冷戦後の欧州の歴史は、ちょうど10年ずつの3つの時期に分けられる。最初は、ベルリンの壁が崩壊した1989年からユーロが導入された99年までの、欧州連合(EU)という仕組みが発足した10年だ。99年から2009年までの次の10年は、地理的な拡大を見せた時期で、新たに12カ国が加盟国となった。

 しかし09年以降の10年間は危機に満ちた時期だった。ユーロ圏のみならず、ウクライナやシリアなどのEU隣接地域から地中海を渡ってくる移民たち、英国の離脱決定、同盟国である米国でドナルド・トランプが大統領に就くなど、危機は多方面から発生した。かつては良好な関係を築けると思われた中国やシリコンバレーのIT(情報技術)企業も、脅威へと転じた。欧州は今や、風にあおられる枯れ葉のようだ。