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英国のメイ首相は、これまで英議会で2度否決されたEU離脱法案を、再び採決にかけようとしている。4月中旬に迫る離脱期限をちらつかせることで穏健離脱派を妥協させ、議会承認を取り付ける作戦だ。だが、彼女は現行の離脱案に固執しないで、再度の国民投票実施に向けて動くべきだったと筆者は批判する。

EUは、メイ首相に4月12日までに決断するよう「最後通告」を突きつけた(写真=ロイター/アフロ)

 デビッド・キャメロン氏は英国史上で最悪の首相だった。だが、現在のテリーザ・メイ首相もキャメロン氏に並ぶ存在となるかもしれない。キャメロン氏は欧州連合(EU)への加盟存続に関し、する必要のなかった国民投票をわざわざ実施する大きな過ちを犯した。一方のメイ首相はEUとの合意を取り付けずに離脱する危険を冒そうとしている。これは筆者がずっと恐れていた事態だ。もしそんなことになれば全ての責任はメイ首相にある。

 メイ首相のやり方を見ていると、古代ローマのある物語を思い出す。それはこんな話だ。老婦人の姿になったクマエの巫女(みこ)は、ローマ最後の王、タルクイニウス・スペルブスのところにおもむく。巫女は預言書9冊に法外な値段をつけて王に差し出すが、王はこれを断る。すると巫女は預言書のうちの3冊を燃やし、残りの6冊に最初と同じ値をつけて王に勧める。タルクイニウス王は再び首を横に振るが、巫女はさらなる3冊を即座に燃やすとまた同じ提案をする。追い詰められた王は、とうとう最後の3冊を言われた通りの値段で買い取ってしまう。