ハイテク企業が窮地に追い込まれている一因は、ユニコーンに対する幻想が覚めたことよりも、VCが資金を集められないことにある。例えば中国政府は、資金の非公式な供給源に対する締め付けを強化している。VCが運用する資金のかなりの部分がこうした経路を通じて流れる。

 しかしながら問題はこれにとどまらない。大口投資家もハイテク企業に対して慎重になり始めている。自転車シェアリングのユニコーン、ofo(オッフォ)が陥った苦境が、これを浮き彫りにしている。多くの人が懸念していたように、ハイテク企業の間で過度の自信が蔓延していたのだ。ofoは18カ月の間に7回もの資金調達を行い、20億ドルの評価を受けていた。それが今や、破綻の危機にひんしている。

 厳しい寒風を最も強く感じているのは、アーリーステージの投資資金を求めるスタートアップだ。コンサルティング大手の英プライスウォーターハウスクーパース(PwC)でパートナーを務めるユーキン・グオ氏によれば、投資家はスタートアップに「1年前に獲得できたであろう評価額の半分程度しか得られない」と警告している。

 投資家はこれまで、スタートアップに資金を提供していることを自慢気に話していたが、今は内容を慎重に見極めようとしている。資金をめぐる交渉の期間も長期化しており、以前は1カ月でまとまったものが6カ月かかるようになった。中国ハイテク産業を対象とする大口投資家として知られる啓明創投の梁頴宇氏はこう指摘する。

 市場を介さない調達が難しくなるにしたがって、基盤の確立した企業は株式の上場を視野に入れる。だがここでもハイテク企業は新たな現実を突きつけられている。大規模な上場計画のいくつかが頓挫したのだ。美団-大衆点評や、中国最大のオンラインヘルスケア・アプリの平安好医生などの株価は、売り出し後、10分の1ほど下落した。

 中国人民銀行が実施した調査によると、中国企業の経営者が抱く景況感は、昨年10~12月、6四半期ぶりの低水準に落ち込んだ。胡潤研究院は、昨年の株価下落で、中国では約160人の億万長者が姿を消したと指摘する。同社は中国富裕層のランキングなどを調べるコンサルティング会社だ。

 テンセントの馬化騰氏の資産は18年に43%も下落し、10月には270億ドル(約3兆円)に減少した。規制当局の締め付けにあい、同氏が経営するSNS(交流サイト)ゲーム会社(編集部注:テンセントのこと)の株価が急落したためだ。同社は18年4~6月、05年以来初めて四半期ベースで減益を記録した。

 その他の元気なオンラインビジネスも、検閲が厳格となり痛手を被っている。中国共産党がこれまでになくあからさまな形で、国内ハイテク企業に介入している。例えば、人気の高いジョークアプリに閉鎖を命じたり、中国最高の起業家であるアリババ集団の馬雲(ジャック・マー)氏が共産党員であることを発表したりしている。

 こうした環境ゆえ、ネット企業は利用者を引き付け、新たな収入源となるすべを見つけ出す必要がある。米投資銀行ジェフリーズ・グループのカレン・チャン氏は、中国企業が持つオンライン広告予算の伸びは過去2年間の30%増から今年は17%増に減速するとみている。

 バイドゥ、アリババ、テンセント、美団-大衆点評、スマートフォン大手の小米(シャオミ)は、従業員の削減や雇用抑制を含むリストラ計画を発表した。配車サービスの滴滴出行は従業員に支払う年末ボーナスをカットし半分にした。

 SNSでは大規模な解雇が行われるとの噂が流れている。Q&Aサイトの知乎(チーフー)は、昨年12月に300人を解雇したと報じられた(知乎はこれを否定している)。求人サイトの智招聘のデータによれば、ネット業界における求人数は18年第1四半期、前年同期比で40%減少した。

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