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中国が一党独裁の下、国策として科学技術の振興に努めている。その成果が表れ始める一方で、倫理を無視する研究が増大。諸外国は懸念を抱く。だが倫理無視や孤立は科学の発展に得策ではない。この点への理解が中国の民主化につながる可能性がある。

中国は世界で初めて、月の裏側に探査機を着陸させた(写真=Imaginechina/アフロ)

 100年前、中国の主要都市で学生によるデモが相次いだ。反帝国主義を掲げる五・四運動だ。運動の指導者たちは1世紀にわたる国家の凋落を食い止めるため、儒教を捨て、西洋のダイナミズムを取り入れようとした。「科学」を振興し「民主化」を進めることで中国は生まれ変わる、と彼らは主張した。

 彼らが建国に貢献した中国は今、かつてないほどの勢いを持って偉大な国家の実現を目指している。1月3日には、無人探査機「嫦娥4号」を月の裏側に着陸させることに成功した。この世界初の快挙は、同国の高まる野望を象徴するものだ。

 だが現在の中国の指導者たちは、科学は民主主義とともにあるとの考えにくみしない。それどころか習近平(シー・ジンピン)国家主席は、たとえ中国共産党が政治的な締め付けを強化しても、先端技術の研究を前進させることができると自信を見せる。米中の対立が激しくなる中、欧米に住む多くの人々が習氏のもくろみは成功するだろうと不安を抱いている。

 習氏の決意に疑いを挟む余地はない。現代科学の発展は、以下の点にかかっている──巨額の資金を投入し、制度を整えて、大勢の頭脳集団を集める。当社(英エコノミスト誌)の調査によれば、中国は科学技術の達成度ランキングの階段を駆け上っている。その一因は、政府が主導しこの3条件をすべて満たしていることにある。

 中国は装置や研究所の整備に何百億ドルもの資金をつぎ込んできた。ダークマターやニュートリノを探知する装置や、ゲノミクスから量子通信、再生可能エネルギー、先端素材まで、あらゆる分野を対象にする研究機関にだ。