各界の有識者たちは、危機的な状況にある健保財政をどう見ているのか。解決の糸口を聞いた。

「保険者としての自治」を尊重
税と保険のバランス議論を

土居 丈朗氏 慶応義塾大学経済学部教授

 企業や業界単位で組織する健保組合の「保険者としての自治」は非常に重要だ。独立採算で自主的な健康増進などの取り組みが可能で、自分たちが頑張った効果を保険料に反映させることもできる。ただ、医療保険財政の議論では健保組合の自治を尊重する雰囲気は薄い。

 2022年12月にまとめた「全世代型社会保障構築会議」の報告書を踏まえ、後期高齢者の保険料も所得に応じて引き上げ、現役世代の負担軽減を盛り込んだ改正法が今年の通常国会で成立した。だがこれだけでは足りず、報酬に応じて健保組合が多く負担する構図は変わらない。消費増税が不人気な中で「裕福な大企業グループ」として高齢者医療などの財源確保に都合よく使われている。

 税と保険料のあるべきミックスが本来はもっと議論されるべきだが、パッチワークのように負担の増減がなされている印象だ。健保組合では保険料率が上がって協会けんぽの水準に近づき、存在意義が薄くなってしまっている。

 負担の増大を防ぐには経済界との連携を強化すべきだ。04年の年金改革では経団連などが厚生年金の料率引き上げをけん制しマクロ経済スライドの導入につながった。5年に1度の年金の財政検証と異なり、健康保険の料率はじわじわと上がっているため注目されにくい。保険料率の引き上げは事業主の負担増にもつながる。経営者層が問題意識を持って社会保障財源の議論を活発化させるべきだ。

 公的医療保険にもマクロ経済スライドが必要だとの声も出てはいるが、医師会の存在もあり議論の機運は高まりにくい。経済界から「今後はこんなルーズなやり方ではだめだ」くらいのことは言ってもよいのではないか。

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