個人から企業に至るまで、ChatGPTの活用ブームに沸いている。単なる面白さではない。生産性が大きく変わることを皆が実感しているからだ。もはやAIなしでは生き残れない。巧みに使いこなす先進事例を紹介する。

「DX(デジタルトランスフォーメーション)の事例を教えて」。法人向けIT研修サービスを提供するスタディメーター(東京・千代田)の箕輪旭代表がこう指示する先にいるのは、部下ではない。米オープンAIの対話型AI(人工知能)「ChatGPT」だ。毎朝、PCの電源を入れると、メールソフトなどとともに立ち上げるのが日課になった。
現実になった「ドラえもん」
事例を聞けば「以下に5つ紹介します」などと列挙してくれる。情報収集にとどまらず、今は法人向けセミナーの内容までChatGPTを使って作ろうと取り組み始めたところだ。「DXに関する1時間のセミナーの構成を考えて」と指示すれば、章立てから時間配分までスラスラと書き出してくれる。「みんなが夢見ていた『ドラえもん』が現実になったかのようだ」と箕輪氏は興奮気味に話す。
一方で箕輪氏は最近、外資系コンサルティングファーム時代の後輩とこんな話をしたという。「事例集めや資料作成のための若手コンサルは、やる仕事がなくなるね」。実際、箕輪氏は検討していた仕事のアシスタントの採用を白紙に戻した。
対話型AIの出現が、企業を成長させるのか、それとも衰退させるのか。早くも株式市場はシビアに見定め始めている。米バズフィードはオープンAIの対話型AIをコンテンツ作成に活用することが明らかになった1月下旬、生産性向上の期待から株価が一時は4倍近くに上昇した。
国内ではコンテンツ投稿サイトのnoteも、ユーザーの記事作成支援にAIを活用すると公表後、一段高となった。ベルシステム24ホールディングスの上昇は、コールセンターの応答にも応用できるとの思惑だろう。一方で、既存ビジネスの価値が代替される懸念が意識され株価が下落するケースもある。対話型AIとどうかかわるかがビジネスの将来を大きく左右することは、もはや市場の共通認識となっている。
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