世界を変える技術が現れた。対話型AI「ChatGPT」に世界中が百家争鳴の状態だ。「創るAI」に米巨大IT企業も色めき立つ。衝撃度を見極めねば、あっという間に出遅れる。
長い冬を抜け、米シリコンバレーに「春一番」が吹いている。昨年、米巨大IT企業は景気減速で業績が軒並み悪化し、大規模レイオフ(一時解雇)に踏み切った。スタートアップ投資は縮み、冬の時代と呼ばれた。
彼らを救う突風となったのは、対話型AI(人工知能)「ChatGPT(チャットGPT)」。2022年11月に公開されるや否や、世界を席巻している。
「まるでゴールドラッシュ」
スイスの投資銀行であるUBSはユーザー数が1月31日時点で1億2300万人に達したと推定。公開からわずか2カ月間の出来事だ。
人気の動画SNS(交流サイト)「TikTok(ティックトック)」でさえ、ユーザー数が1億人を超えるのに9カ月、画像共有アプリ「インスタグラム」は2年半を要した。UBSは「これほど速いペースで拡大した消費者向けアプリケーションは、過去20年間で記憶にない」と分析した。
「まるでゴールドラッシュだ。米国の多くの企業経営者が金を掘り当てようと、ChatGPTをどう生かすか当社に相談に来ている」。AIなどのデータ分析基盤を提供する注目企業、米データブリックスのアリ・ゴディシCEO(最高経営責任者)は、今年に入ってAIに関する問い合わせが急増したと打ち明ける。
ChatGPTが鳴らした号砲は、投資環境をも一変させようとしている。米西海岸の複数のベンチャーキャピタリストは「この数カ月でAIの価値は飛躍的に高まった」と口をそろえる。「ChatGPTのようなAIが事業に組み込まれているだけで、企業評価額が上がる状況だ」(シリコンバレーのVC担当者)
世界中が熱狂し、大きなうねりとなったこのサービスの本質はどこにあるのか。
AIベンチャーである米オープンAIが公開したChatGPTは、様々な質問に答える対話型AIだ。英語だけでなく日本語にも対応し、機能の大部分を無料で利用できる。PCのブラウザーでChatGPTのウェブサイトを開き質問をテキストで打ち込むと、AIがその回答をテキストで記述する。チャットのようにその回答に続けて質問することもできる。
画像や文章、音声などのコンテンツを生み出すAIを「生成AI」と呼ぶ。ChatGPTはユーザーの質問や指示からテキストなどを創る生成AIの一種だ(3ページ囲み記事参照)。
使い方はユーザー次第。単純な質問だけでなく、プログラムコードのバグを発見させたり文章を推敲(すいこう)させたりもできる。議事録を読み込ませて「箇条書きで論点を整理してほしい」と依頼すれば、要約してくれる。世界中のユーザーが「賢い使い方」を発見しようと競い合っている。
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