COLUMN「推し活」の経済効果、企業を動かす
推し活――。自分が推している人やモノ、キャラクターなどを、熱心なファンが応援する活動のこと。言葉は知っていても、「自分には関係ない」と思っている人もいるかもしれない。しかし、推し活の経済効果は決して侮れない。
推し活応援メディアのOshicocoが2022年2月に実施した調査によると、18~24歳の34%が月3万円以上を推し活に使っており、中高生でも月1万円以上を費やす人が26%もいる。調査対象は女性で、普段から推し活にいそしむ人も多く、金額は「予想以上に高かった」(Oshicocoの多田夏帆・代表取締役CEO=最高経営責任者)。コンサートやグッズ、衣服、美容院、宿泊先などの関連業界にお金が落ちる。
ファン一人ひとりの推し活が積み重なって経済効果は大きくなる。20年末に活動を休止したアイドルグループ「嵐」が、20年11月に配信したライブは、1日で300億円の経済効果を生んだという試算がある。中堅企業の年商規模のお金がたった1日で動いたことになる。
こんな社会現象を受けて、熱狂的なファンを育てて味方に付ける「推し活マーケティング」が企業にも広がる。
自社商品を活用して成功したのが、ビスケット「たべっ子どうぶつ」を手掛ける菓子メーカー、ギンビス(東京・中央)だ。1978年に発売したたべっ子どうぶつは、子どもや子育て世代に人気の商品。10~20代も取り込みたいが、味を変えると長年のファンが離れる懸念がある。着目したのが菓子箱のイラストだった。
2019年、動物のイラストをカプセルトイにしたところ大ヒットし、どこで手に入るのかと問い合わせが殺到。「らいおんくんが好き」「私はぞうさん」など、各キャラクターを推す人が現れた。勢いに乗ってギンビスはライセンス事業としてグッズやカフェなどを展開しており、10~30代から人気を集めている。
Oshicocoの多田氏は「動物がカラフルに色分けされているため、(推しの色の商品などをそろえる)『推しカラー』文化と相性がよかったのではないか」と話す。22年のたべっ子どうぶつシリーズの売上高は推し活効果もあり、前年比2桁の伸び率で成長。ギンビスは世界観を大切にしながら、ファンが楽しめる企画を続ける方針だ。
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