大手が最強とは限らない。それを浮き彫りにする指標が顧客推奨度 (NPS)だ。今回の本誌ランキングでは、複数の業界で「下克上」が起きた。中堅でも強い企業はファンをがっちりとつかんでいる。その極意をひもとく。
このブランドを友人らに薦めたいですか──。この1問に絞り、取材班は2回目となる消費者1万人調査を実施。薦めたい度合いを0~10点の11段階で選んでもらった。9~10点を選んだ人を「推奨者」、7~8点を「中立者」、6点以下を「批判者」と分類。推奨者の割合から批判者の割合を差し引いた「顧客推奨度(ネットプロモータースコア、NPS)」を算出。10業種のランキングをまとめた。
ブランドを信頼し、愛着を持たなければ、薦めることはできない。つまりNPSのスコアの高さは「ファン」の割合が高いことを示す。今回の調査で改めて見えてきたのは、必ずしも大手ばかりが愛されているわけではないということ。PART1では、業界上位ではないのに支持が高かった企業の取り組みを紹介する。まずは回転ずし業界を見てみよう。

スシローやくら寿司、はま寿司などが苛烈な出店競争を続ける。しかしランキングでは大手各社は下位に沈んだ。トップとなったのは「すし銚子丸」だ。運営会社の銚子丸は関東1都3県に約90店を展開し、売上高は約170億円(2022年5月期)という中堅。規模で劣る同社がなぜ高い評価を受けているのか。
「いらっしゃいませ」「こちらお薦めですよ、いかがですか」──。入ってまず驚くのは、板前やホールスタッフからの声がけが多いことだ。
大手の店舗では、タッチパネルでの注文やセルフレジでの会計が一般的になり、店員と一度も顔を合わさずに食事が済んでしまうこともある。これに対し、銚子丸の石田満社長は「人を削減するためだけのデジタル技術は使わない」と話す。
例えば、注文用のタブレット端末。「会計」ボタンを押すと必ずスタッフが来て「ご注文はおそろいですか」と確認してからレジに案内する。レジも無人ではなく、操作はスタッフが行うセミセルフタイプ。機械に「ありがとうございました。またお待ちしております」と言わせることはできるが、銚子丸はあえてそうしない。
スタッフが来店客を出迎えるのにも理由がある。板前に「新規3名様です」と声をかけながら案内することで、客と板前をスムーズにつなぐ役割を果たしているのだ。
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