欧米でますます深刻になっているエネルギー危機や人手不足。省エネルギーや省人化を売りにする企業にとってのチャンス=「省機」でもある。もともと資源の乏しい日本のお家芸を再び花開かせるためには何が必要なのか。
ダイキン工業
ヒートポンプ式暖房給湯器

ベルギーの港町オステンド。ここに、価格が急騰したガスを使わないことから欧州で需要が急増している製品の一大生産拠点がある。ダイキン工業が欧州シェア首位のヒートポンプ式暖房給湯器だ。
ヒートポンプ式は電気で冷媒を圧縮して熱を生み出して温水をつくり、暖房や給湯に用いる。欧州で主流のガスボイラー式のようにガスを使うことなく、二酸化炭素(CO2)排出量を約65%削減できる。
1月上旬に工場を訪れると、現場は増産対応に取り組んでいた。同工場はもともと業務用空調機器の拠点だったが、ヒートポンプ式の需要急増を受けて2022年春に専用ラインを増設し、23年にも増設する予定だ。ダイキンヨーロッパ生産本部のアンディ・デウィルデ生産技術部長は、「様々な調整を繰り返して、ヒートポンプを増産できるスペースを作った」と振り返る。

需要急増はウクライナ危機がもたらした一時的なブームなのか。ダイキンヨーロッパの坪内俊貴社長は「欧州連合(EU)は50年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を立てた。30~35年までにヒートポンプは1000万台市場になる」と、継続的なニーズの拡大を確信している。
実際、各国政府がヒートポンプ式への補助制度を拡充している。ドイツでは省エネ改修の場合、機器と工事費の一定割合を補助。英国は省エネ改修時に5000ポンドの補助金を用意している。フランスやイタリアでもヒートポンプ式の導入には優遇が受けられる。
生産能力は8倍強へ
ダイキンはこうした潮流を予測し、早くから生産増強の準備を進めていた。そして22年7月、約420億円を投じ初のヒートポンプ式専用工場をポーランドに建設すると発表。同工場は24年に稼働する。他工場も含め25年度の生産能力を21年度の4倍の100万台の生産規模に引き上げる。
ダイキンは同期間に市場規模が3倍の300万台以上になると予測するが、それを上回るペースでの生産増強で最大手の座を確保する。30年度には欧州での生産能力を21年度比8倍強の年間210万台以上に引き上げる予定だ。
研究開発も強化する。グローバルマザー機能のあるベルギーで200億円を投じ、24年に同国のゲント大学のサイエンスパーク内に新しい研究開発センターを開設する。
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