欧州にエネルギー危機をもたらしたロシア。その経済にも暗雲が垂れ込めている。戦地への動員を逃れようと国外への人口流出が拡大し、主要産業にも影響が出ている。

1月、モスクワ市内の大聖堂で開かれたロシア正教会のクリスマス礼拝に1人で参加したロシアのプーチン大統領(写真=SPUTNIK via ロイター)
1月、モスクワ市内の大聖堂で開かれたロシア正教会のクリスマス礼拝に1人で参加したロシアのプーチン大統領(写真=SPUTNIK via ロイター)

 2022年2月末のウクライナ侵攻とそれに伴う西側諸国の制裁開始から数週間で急降下したロシア経済。政策金利引き上げや通貨・資本の制限などが功を奏し、市場は安定を取り戻した。ただ中長期的な下振れリスクは大きい。22年第3四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比3.7%減と第2四半期(同4.1%減)に続く低下幅で、景気後退に陥っていることは明らかだ。

 侵攻の長期化で直面することになる最大の課題は人口の減少だ。深刻なのが、軍事侵攻への動員逃れのため国外に逃れる国民の増加である。22年第3四半期にロシアを離れた人数は前年比で120万人も増加した。ロシアの全労働力の約1.5%が流出したといわれており、追加動員が発令されれば、さらなる人口減に直面する可能性が高い。

 エネルギー価格の高騰により、22年のロシアの輸出収入は過去最高水準に達した。ロシア統計局の発表では、1~10月の石油生産量は前年同期比2.4%増。その多くが輸出され、石油産業がロシア経済を引き続き下支えしていることに変わりはない。

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