日本では、政府や企業が経済成長の起爆剤として規制緩和に動くのが定番。しかし抜本的に踏み込めず、適切な改革に結び付けられないケースはざらだ。変化するルールにどう向き合うかは、企業にとって永遠の経営課題となる。

(写真=共同通信)
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歴史ある業界を覆う規制の波
新たなビジネスチャンスを探せ

 「銀行界の悲願を実現不可能な状態に陥らせたら、メガバンクを名乗る資格が危ぶまれた。首の皮一枚でもつながっていれば巻き返せる」。2022年12月12日夜、三井住友フィナンシャルグループ(FG)の役員はこう言って胸をなで下ろした。

 金融審議会の作業部会はこの日、金融市場の制度に関する中間報告書案を公表した。銀行と証券の情報共有に歯止めをかける「ファイアウオール規制」の追加緩和について、「引き続き検討を行う」とした。三井住友FG傘下のSMBC日興証券と三井住友銀行の間で、この規制に違反する行為が発覚していただけに、判断先送りの結論は「御の字」だった。

 銀証間のファイアウオール規制は、ちょうど半年前の6月、上場企業の非公開情報が共有しやすくなるよう緩和されたばかりだった。それまで銀行は書面で各企業から同意を得る必要があったが、グループ内の証券会社と非公開情報を共有することや、企業側の意向で拒否できることをウェブサイトで示せば、企業側に通達せずに実行できるようになった。

 銀行業界は、緩和の対象を中堅・中小企業や個人にまで広げることを求めている。全国銀行協会が22年4月に金融審に出した資料は、「追加緩和によりイノベーションの担い手であるスタートアップの徹底支援が可能になる」というアピールから始まる。

全国銀行協会の半沢淳一会長(右)と、秋田銀行などが出資した秋田洋上風力発電による大型洋上風力設備(左)(写真=左:共同通信、右:北山 宏一)
全国銀行協会の半沢淳一会長(右)と、秋田銀行などが出資した秋田洋上風力発電による大型洋上風力設備(左)(写真=左:共同通信、右:北山 宏一)

 「グループ横断的にチームアップし、成長ストーリーを共有しつつトータルな支援を実現したい」

 「金融グループがエンジェル投資家とスタートアップ・非上場企業をつなぐリスクマネーの橋渡し役に」

 銀行側が追加緩和によってスタートアップ支援を加速する真意は何か。あるメガバンク幹部は「買収や出資を伴う業務提携の可能性を探り、特にフィンテックの波に乗り遅れないため」(メガバンク幹部)と声を潜める。企業の規模の違いから、ビジネスを展開するスピードでかなわない新興企業に対し、膠着状態に持ち込もうとするような姿が浮かんでくる。

 銀行を巡っては、業務範囲と出資の規制が21年の銀行法改正で大幅に緩和された。低金利の環境が長引き、新たなビジネスモデルを模索するよう迫られたためだ。もちろん、その前から厳しいルール下で、他業への進出を図ってきた銀行はある。

厳しさ増す経営を規制緩和に支えられてきた銀行
厳しさ増す経営を規制緩和に支えられてきた銀行

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