ウェブサービスを開発、スタートアップを起業 
副業が本業に、強みを最大限に生かす

(写真=小林 淳)
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 Shu Suzukiさん(アカウント名)は、かつてメルカリに正社員として勤務しながら、副業を通じて起業したエンジニアだ。2018年に企業分析のウェブサービス「バフェット・コード」を副業で立ち上げ、スタートアップを起業し、19年に「転職」。本業だったメルカリには、現在は副業として携わっている。

 バフェット・コードは、日米の上場企業約1万社の財務データや株価指標などが集まる情報分析サイト。ツイッターのフォロワー数は14万人に迫り、クラウドファンディングでは累計調達額が2000万円を超えた。今最も注目が集まるウェブサービスの一つだ。

 メルカリのエンジニアだったSuzukiさんは、学生時代の友人で後に共同創業者となる福田智宏さんから、無料で使える企業分析ツールを作ろうと誘われた。「当初は『副業』という意識は薄かった」とSuzukiさんは語る。無料サービスのため最初は売り上げがなく、サーバーの運用費用は自身のポケットマネーから持ち出しだったが、「プログラムを作るのが単純に好き」だからこそ土日を費やすなどして時間を捻出し、開発を続けた。次第にSNSで注目を集め、NTTドコモや証券会社など多数の企業も活用する本格的な企業分析ツールへと成長した。

 バフェット・コードの特長は、セグメント別の財務情報やPER(株価収益率)、ベータ(市場連動性)といった高度な指標の推移がグラフで可視化されている点だ。無料でありながら有料サービスに迫る企業分析を提供することに成功している。これらを下支えするのが、データを効率的に処理するSuzukiさんのノウハウだ。

 メルカリを退職し、バフェット・コード開発を本業にする決断の後押しになったのは、ユーザーからの想定以上の反響だった。意気込みを感じ、法人化や初めてのクラウドファンディングが重なったタイミングで本業に転換した。

 本業としての給与は下がった。それでも、妻から「エンジニアとして手に職があるのだから」と挑戦を後押しされたという。「当時は僕の方がビビっていた」と話すSuzukiさんだが、自ら創業したスタートアップで過ごす今は「毎日が刺激的で、ヒリヒリする楽しさがある」。

 メルカリでは、契約社員として週1日のペースで勤務。先端技術の動向をキャッチできる副業として重宝している。本業・副業を合わせた給与水準は転職前と「ほとんどトントン」だと話す。

 18年に2人でサービスを開始したバフェット・コードの開発メンバーは、10人まで増えた。新たに国内の非上場スタートアップ企業約5000社のデータベースも整備し、法人向けの有料サービスを充実させている。23年中に100万MAU(月間利用者数)を目指すため、サービスの開発を加速している。

有料サービスに迫る企業分析を提供、Suzukiさんのデータ処理ノウハウが生きる
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