このままでは確実につぶれる──。社長就任時に強い危機感を抱いた。信念をよりどころに改革を進め、最重要の顧客すら敵に回してきた。危機の本質を見抜いたリーダーが、復活に至った軌跡を語る。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=加藤 康)
(写真=加藤 康)
PROFILE

橋本英二[はしもと・えいじ] 氏
1955年熊本県生まれ。79年一橋大学商学部卒業、新日本製鉄(現日本製鉄)入社。88年、米ハーバード大学ケネディ公共政策大学院卒業。主に鋼材の営業畑を歩み、96年以降は輸出や海外事業を担当した。2009年執行役員、13年には常務執行役員となりブラジルの合弁会社の立て直しを任された。16年副社長、19年から現職。(写真=加藤 康)

2022年4~9月期は国内の粗鋼生産量が16%落ちる中で、連結事業利益が半期として過去最高になりました。通期でも純利益は過去最高になる見通しです。業績を自己採点するなら何点でしょうか。

 公約である「いかなる環境下でも(在庫評価差を除いた)実力ベースでの年間事業利益6000億円」というのはクリアしそうです。しかし、(鉄鋼市場の)環境が悪く、国内製鉄事業は本来であれば4割ほど稼ぎたいところですが、実際は4分の1になる見込みです。粗鋼生産量が100万トンでも戻ればかなり上振れする収益構造にはなっているのですが、そこまでいかなかった。そういう意味では75点ぐらいになるのではないでしょうか。

自分が再建を請け負えるのか

社長歴は10月で約3年半になりました。日鉄をV字回復に導きましたが、19年に社長に就任した時はどんなことを考えていたのですか。

 このままでは確実につぶれるという状況だったんです。製鉄コストが膨れ上がり、価格も30年ぐらいずっと安売りが続いていた。しかも、製鉄所の設備の老朽化更新の投資も必要でした。