水際対策の緩和で外国人観光客が戻り始め、観光などは明るい兆しが見えてきた。製造業は未曽有の危機から得た学びで、モノづくりの常識を変えようともがいている。サプライチェーンの再構築、在庫を積み増す冗長性など、新たな強みも生まれ始めた。

 「外国人観光客は予想以上に戻ってきましたね」

 大阪市の中心部、梅田にある阪急百貨店うめだ本店で、外国人客に向けたマーケティングを担当する白井康之・阪急阪神百貨店海外顧客化推進部ディビジョンマネージャーは、顔をほころばせた。

阪急百貨店うめだ本店ではブランド品売り場などに外国人観光客が訪れ、にぎわいが戻り出した(写真=上2点:太田 未来子)
阪急百貨店うめだ本店ではブランド品売り場などに外国人観光客が訪れ、にぎわいが戻り出した(写真=上2点:太田 未来子)

 10月11日、政府は1日当たり5万人に制限していた入国者の上限を撤廃した。新型コロナウイルス対応の水際対策が大幅に緩和されると、国内の主要観光地や大都市の商業施設などに外国人観光客が続々と訪れ、街ににぎわいが戻り始めた。入国前にワクチン接種証明書の提出を求めるなど多少の要件は残るが、ビザ無し渡航や個人旅行が再開されたのだ。

 阪急百貨店本店では、1日平均50人ほどだった免税コーナーへの来客数が、入国上限が撤廃されてすぐの週末(同月15、16日)に200人程度に急増。その後は平日も同程度で推移しているという。11日は、観光需要を喚起するための国内向け「全国旅行支援」もスタートした。コロナ禍で2年余り客数減にあえいでいた観光地、繁華街は一気に沸き立った。

 東京・浅草の仲見世通りはコロナ禍以前に戻ったかのよう。スマートフォンで撮影したり、食べ歩きをしたりする外国人観光客で混雑した。日本航空(JAL)の11~12月搭乗分の日本行き国際線予約は9月下旬の緩和発表後に同月初と比較して3倍以上に増加したという。主要空港では国際線の増便も相次いでいる。

入国者数制限が撤廃されると、観光地には外国人観光客が次々と訪れた(写真は東京・浅草)(写真=ロイター/アフロ)
入国者数制限が撤廃されると、観光地には外国人観光客が次々と訪れた(写真は東京・浅草)(写真=ロイター/アフロ)

 既に観光客の「次」を狙う動きも出ている。不動産運用会社、プロフィッツ(東京・千代田)は2023年2月、長期滞在する訪日客や欧米大手企業の社員などを狙ったアパートメントスタイルホテルを東京・浜松町に開業。長期滞在型のラグジュアリーホテルが都内には少ないと見てのことだ。「所得の高い訪日客のライフスタイルもコロナ禍で変化した。新たな需要を捉える」(玉真永棋・プロフィッツ取締役投資責任者)と意気込む。

 コロナ禍前の19年の訪日外国人旅行者は約3188万人。観光庁の推計では、その消費額は約4.8兆円に上る。だが、水際対策を徹底した21年の入国者数はわずか25万人に落ち込んだ。岸田首相は10月28日の観光立国推進閣僚会議で、「インバウンド(訪日外国人)消費5兆円超の速やかな達成を目指す」と言い切った。

 ただ、観光業の完全復活には、中国のゼロコロナ政策見直しが必要になるという難題もある。19年の訪日外国人の4割弱を占めた同国と香港の来日客が回復しないためだ。そのため、コロナ禍前の状況に戻るのは、早くても24年ごろとの見方も少なくない。それでも3年近くコロナ禍で苦しんだ日本経済は今、ウィズコロナに向かう歩みを次第に速めている。

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