劇薬を覚悟でアクティビストと手を組み、華麗な復活を遂げたオリンパス。社外取締役が率いたガバナンス改革で企業価値を高めた例は日本にもある。実効性のある取締役会を構築し、市場を味方にできるかが勝敗を分ける。

オリンパス
社外取締役が後ろ盾 抵抗勢力を抑える
「不正会計問題が発生した約10年前のオリンパスと、今は全く異なる。改革は順調だが、新しいチャプターに進むべき時だ」──。
オリンパスのシュテファン・カウフマン取締役は10月21日の記者会見でこう語った。2023年4月1日付で社長兼最高経営責任者(CEO)に昇格し、竹内康雄現社長から構造改革のバトンを受け取ることが内定。1919年の創業以来、外国人として2人目のトップ就任となる。
オリンパスで巨額の粉飾決算が発覚したのは2011年夏。初の外国人社長となったマイケル・ウッドフォード氏の告発がきっかけだった。1990年代から歴代の経営陣が不正に手を染め、根深さは際立っていた。経営危機に陥ったオリンパスは、上場廃止や身売りが取り沙汰される中、取締役会の立て直しを急いだ。
黒字事業も売却して再構築
2012年4月に社外取締役に就き、再建を託された蛭田史郎・旭化成元社長は「マーケットから信頼される経営を再構築することからスタートした」と話す。目標だった「1兆円の売り上げ達成」を棚上げし、M&A(合併・買収)で肥大化した事業ポートフォリオの見直しに着手。赤字はもちろん、黒字のビジネスでも不要と判断すれば切り離していった。
会社が存亡の危機に立たされた時期に、蛭田氏がよりどころとしたのが「社会におけるオリンパスの存在意義は何か」という視点だった。「(近視眼的に事業拡大を追った)従来の価値観とは違う、マクロな視点に寄った経営を目指した。オリンパスを取り巻く環境変化にどう対応するか、社内か社外かという立場に関係なく議論を重ねた」と振り返る。
蛭田氏は就任から6年で復活の道筋をつけ、18年6月に退任。その後、竹内社長が主導する改革を支えてきたのが、物言う株主として知られる米投資ファンドのバリューアクト・キャピタルだ。竹内社長は「バリューアクトがオリンパス株を5%取得した18年春から対話を始め、夏くらいには取締役会に入ってもらうのも手だと考えていた。圧力と感じたことは全くなく、強いグローバル企業になるという観点からバリューアクトと結び付いた」と語る。
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