物言う株主(アクティビスト)が社外取締役となり、利害対立に揺れる東芝。最先端のガバナンス体制でも経営は上向かず、むしろ混乱に拍車をかける。国や金融界は社外取締役の増員を呼びかけるが、本当に必要なのか。

 「指名委員会等設置会社というガバナンス形態が本当に良いのか疑問が出ている」。企業統治に詳しい中村直人弁護士は、経営の混乱が続く東芝について、こう指摘する。

 すべての株式会社は取締役を置く必要があるが、その先の機関設計は選べる。東芝は2003年に指名委員会等設置会社に移行。取締役会の機能である指名委員会などの過半数を社外取締役が占めている。経営者から独立した取締役会が業務執行を監督する欧米型の「モニタリングモデル」で、透明性が高い最先端のガバナンス形態とされてきた。

 だが、15年に組織ぐるみの不正会計が発覚。モニタリングモデルは機能せず、東芝の信用は失墜した。日本の上場企業は4000社程度あるが、最先端のはずの指名委員会等設置会社を採用しているのは、わずか89社にとどまる。

(写真=共同通信)
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 そして今、東芝の取締役会は激しい利害対立に揺れている。取締役12人のうち、社内の執行役を兼務するのは島田太郎社長兼CEO(最高経営責任者)と柳瀬悟郎副社長兼COO(最高執行責任者)の2人だけ。物言う株主(アクティビスト)を含めて8割を社外取締役が占める。前体制で会社を3分割する案を出したが、風向きが悪いとみるや2分割案に修正。これが臨時株主総会で否決されると、非上場化を探ることになった。

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