フランスとスウェーデンは手厚い子育て支援で、出生率を高めてきた。両国ともに、父親が家事・育児の主な担い手になることも珍しくない。1980年代まで両国と日本の出生率には大差がなく、学べる点は多い。

これまで日本は出産や子育ての支援を拡充させてきたが、出生率の低下に歯止めがかかっていない。もはや打つ手がないのか。世界に目を転じると、さらに手厚い支援で出生率を反転させてきた国がある。その代表格がフランスとスウェーデンだ。
フランスの2020年の合計特殊出生率は1.83と欧州連合(EU)内でもっとも高く、スウェーデンは1.66でその後を追う。両国ともに近年は出生率が下落傾向にあるが、それでも日本に比べると高い。ともに急速な人口減少の危機にひんした時期があり、少子化対策を国家戦略の需要な柱に据えてきた。まずはフランスの事例を見てみよう。
義務教育は3歳から
10月初旬の午後、首都パリ在住のアドリンヌ・ルノーさんは自宅での仕事を切り上げ、近所の学校に通う長男と次女を迎えに行った。帰宅して子どもたちが遊んでいる間に、夫が2歳の次男を連れて保育園から帰る。ルノーさん家族には16歳の長女も含め4人の子どもがいるのだ。
フランスでは生後2カ月から子どもを預けられるため、出産後の状況に応じて子どもたちを保育所に通わせてきた。利用料は所得に応じて決まり、所得が低い人は無料で預けられる。特徴的なのは、3歳から義務教育が始まる点だ。3歳から日中の長時間を学校に預けられるため、親の負担が大きく軽減されている。
ルノーさんは、国際的な非政府組織(NGO)である「国境なき医師団」のスタッフとして働く。出産前はナイジェリアや中央アフリカなどアフリカに赴いて活動することもあったが、今は出張はない代わりに忙しい日々を送っている。
夫は映像制作の仕事で勤務時間が不規則だが、子どもが増えることに全く抵抗はなかったという。様々な制度や親の助けを借りながら、仕事と育児を両立している。ルノーさんは「育児や家事に完璧を求めないことが重要」とほほ笑んだ。
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