ガバナンスと人的資本戦略をつなげよ
伊藤邦雄 一橋大学 CFO教育研究センター長

 「有価証券報告書の記載事項に非財務情報をしっかり明記する。義務付けたい」

 今年7月の会合で、岸田文雄首相は大企業に対して、来年度から人的資本の情報開示を義務付ける方針を示した。非財務情報の可視化や開示への対応は待ったなしの状況だ。では、どんなポイントに注意すべきなのか。非財務情報を長く研究対象とし、各種の政府の委員も務め、「伊藤レポート」の生みの親でもある一橋大学CFO教育研究センターの伊藤邦雄センター長に話を聞いた。

 なぜ今、人的資本などの非財務情報に注目が集まるのか。企業価値の決定因子が1990年代以降に無形資産へとシフトし、当初はその要素として企業ブランドや知財に焦点が当たってきた。だが、もっとど真ん中にあるのが人材。今で言えばデジタルを使い切る能力そのものに価値がある。

 人的資本の可視化は、何も投資家など外に見せるためだけのものではない。社内のリソースを把握し、理想と現実のギャップをどう埋めるかという活用法もある。経営戦略と今いる人材がどのぐらいマッチしているか。新規事業と今の人材能力とのギャップをどうやって、埋めていくかが大事だ。

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