経営者が可視化すべきポイントはまだ見ぬ機会や価値に限らない。企業価値を一瞬にして奈落の底に突き落としかねないのが「リスク」だ。取り巻く50のリスクをいかに可視化し、防ぐか。
新型コロナウイルスの感染拡大や気候変動、自然災害、原材料の高騰、人手不足──。企業にはさまざまなリスクが突如として襲いかかってくる。こうした見えない敵に対して、AI(人工知能)を使った予測で立ち向かうのが、長崎ちゃんぽん専門店を展開するリンガーハットだ。
米シリコンバレーでAI関連サービスを手掛けるパロアルトインサイトと組み、緊急事態に対応する需要予測システムを共同開発した。日付を選択するだけで、店舗ごと、かつ1時間ごとに売上高の予測値や店舗スタッフの必要人数が表示される仕組みだ。需要予測の精度を高めることで、外食企業にとってのリスクである人手不足や資材の過剰発注を防ぐのが狙いだ。
パロアルトインサイトの石角友愛CEO(最高経営責任者)は今回の需要予測システムについて「(コロナ禍による)緊急事態特化型として開発したが、台風などの災害にも効果を発揮できる」と胸を張る。
リンガーハットは2018年からAIを使った売り上げ予測の開発に取り組んできた。しかし、突然のコロナ禍によって来店傾向が大きく変わり、予測の精度が大きく低下。これまでの開発体制を断念し、パロアルトインサイトと連携した。
駅近や住宅街、路面店、ショッピングモール内など、店舗をいくつかのタイプに分け、過去の販売実績と組み合わせることで予測の精度が改善。平均誤差率は目標とするプラスマイナス2.5%まであと少しのところまで来ている。22年8月にまずは2店舗でテスト運用を開始。23年にかけて全国約700店舗の「リンガーハット」「とんかつ濵かつ」に順次導入していく予定だ。
需要予測サービスは国内外に多く存在し、実際に使われている。ただ、リンガーハットが求めるのは売り上げの予測の「先」にある。
将来的には予測データを近隣の店舗間でまとめて運用できるようにするのが目標だ。店舗ごと、1時間ごとに必要なスタッフの人数が分かるため、店舗をまたいだシフト表のスケジュール調整ができる。近隣に立地する店舗であれば、繁閑が異なる際には応援スタッフを送り込むことも可能になる。リンガーハットは、人手不足による販売機会の損失という問題の解消も視野に入れる。
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