「どの時期と申し上げられる段階ではない」。9月30日、東京電力ホールディングスが開いた会見で、小早川智明社長は、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の再稼働の目標についてこう答えた。同原発は2021年、テロ対策工事で不備が発覚。現在、複数の改革に取り組んでいるが、原子力規制委員会や地元の了承をまだ得られていない。電力の最大需要地である東電管内での原発再稼働が待たれるが、「今冬の稼働は現実的に難しい」と東電関係者は話す。

過去2番目の貿易赤字

(写真=左:共同通信、右:Karol Serewis/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)
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 9月末に発表された今冬の電力需給見通しによると、東電、東北電力管内の供給余力を示す予備率は23年1月に4.1%、同2月に4.9%。最低限必要とされる3%は超えるが「この予備率に、ロシアの天然ガス事業『サハリン2』からの途絶は盛り込まれていない」(電力大手)。途絶が現実となり予期せぬ気候の悪化があれば計画停電もちらつきかねない。電力関係者らの警戒感は例年以上に強い。

 燃料価格の高騰がもたらすのはエネルギー安定調達への懸念だけでない。過去最悪レベルの勢いで膨らみ続けているのが貿易赤字だ。

 統計開始の1996年以来、基本的に黒字だった貿易収支が赤字基調に転じたのが、東電福島第1原子力発電所の事故があった2011年から。国内の全原発が停止していた14年上期に過去最大の赤字を記録したが、22年上期はそれに迫る5兆6688億円の赤字で過去2番目となった。

 貿易赤字が膨らんでいる最大の要因はエネルギー。原発稼働が停滞するなかで今、日本の電力を支えるのが、全体の約7割を占める火力発電所だ。その燃料である石炭や液化天然ガス(LNG)の高騰が止まらないのだから、日本の貿易赤字額はさらに拡大する可能性が高い。

 エネルギー危機は世界に波及しているが、国や企業によって明暗が分かれている。利益を伸ばしている「勝ち組」が世界の石油、天然ガス産出国に権益を持つ欧米メジャーだ。

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