福島県飯舘村を訪れると、面積の8割が森林で緑の豊かな風景が広がる。その木材を活用しようと、今夏からバイオマス発電所の建設が始まった。森は手入れをしないと荒れてしまうので、継続的に管理する方策として期待がかかっている。

 飯舘村はこれまで、2011年に起きた東日本大震災の影響によって苦しんできた。東京電力福島第1原子力発電所の事故により、約40kmの距離にある同村はしばらく、全域が計画的避難区域に指定された。住民が突如として故郷を追われ、やっと帰村がかなったのは17年からだ。それでも一部は帰還困難区域に指定されたままで、放射性物質を減らそうと除染作業を続けてきた。

除染作業で積み上げられた袋は、仮置き場から搬出されて大幅に減った。飯舘村民は避難を余儀なくされた後、徐々に帰村して復興を進める(写真は2021年)(写真=毎日新聞社/アフロ)
除染作業で積み上げられた袋は、仮置き場から搬出されて大幅に減った。飯舘村民は避難を余儀なくされた後、徐々に帰村して復興を進める(写真は2021年)(写真=毎日新聞社/アフロ)

 バイオマス発電所は「林業の活性化や住民の帰還に資する雇用の確保などを図り、復興に向けて地域の再生を加速化させる」(飯舘村産業振興課)という意義がある。24年に稼働予定で、出力は7500キロワット(kW)。想定する年間売電量は5300万キロワット時(kWh)程度で、一般家庭1万6000軒超の消費量を賄える計算だ。

財源めぐり異論も

 ただ、この案件を国の後押しで電力会社が進める方法については「原発事故後の負担のあり方がゆがんでしまう」(複数の政府関係者)と異論も出ている。どういうことか。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1292文字 / 全文1830文字

【春割/2カ月無料】お申し込みで

人気コラム、特集記事…すべて読み放題

ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。