リモートでのコミュニケーション時、脳内では何が起きているのか。「脳トレ」で著名な川島隆太氏は、脳活動が同期せず、目の前に相手がいても心は孤独な状態だと説明する。世の中から共感が失われつつあると警鐘を鳴らす。

川島隆太 東北大学加齢医学研究所所長
川島隆太 東北大学加齢医学研究所所長
1959年千葉市生まれ。東北大学医学部卒業。同大学大学院医学研究科修了。スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員などを経て、2014年から現職。17年から東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター長も兼務。「脳トレ」で知られる。(写真=竹井 俊晴)

コミュニケーションに関わる脳の活動を研究されています。最近の研究結果からはどんなことが分かっていますか。

 コミュニケーションが深まってお互いを理解し、共感するようになると、脳のある部分の活動が同期する現象が起きることが明らかになっています。

 発見のきっかけは、絵本の読み聞かせでした。親が子どもに読み聞かせをしているときに親子の脳を測定すると、親は読み上げているだけ、子どもは聞いているだけなのに、この現象が起きていました。

新型コロナウイルスの感染拡大でオンラインでのやり取りが増え、コミュニケーションの在り方が大きく変わりました。

 脳活動が同期する現象がオンラインでも果たして起きているのかどうか。東北大学の学生を5人1組にして、学部の勉強や趣味について、対面とオンラインで会話してもらい、脳活動を比較する実験をしました。

 結論から言えば、対面で会話をしている時には話が盛り上がるとどんどん同期が高まっていくのに対して、オンラインの場合には、会話は続いているのに、全く同期しないということが分かりました。

 我々の脳は、少なくとも現状のリモートコミュニケーションでは、同期しないことが証明されました。これはコロナ禍以来、約2年半にわたってリモート中心の生活を送ってきた我々の実感とも一致しています。

画面越しでは視線が合わない

脳活動が同期しない。共感しないのはどうしてでしょう。

 理由は2つあると考えています。まず視線が合わないのが致命的ですね。画面の相手の顔を見ると視線がずれてしまうし、相手と視線を合わせようとカメラを見ると、今度は相手の顔が見えない。目と目で語り合うこと、相手の表情をつかむことがどうもうまくできない。

2つ目の理由は何でしょうか。

 リモートで画像を見ていると、連続的に動いているように見えるかもしれませんが、実際には1秒間に30フレームといった数字で表されるように、何枚もの静止画で構成されている。我々の脳というのは非常に精緻なシステムで、画面に映っているものはリアルな人ではなくて、紙芝居が演じられているという認識をしています。

 我々の意識の上の知覚と、それから脳が見ているものとでは、後者のほうが精緻なんです。

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