2022年4月に赤字ローカル線の収支を公表したJR西日本。国鉄から引きずる問題を解決しようと批判覚悟で踏み切った。JRのこれまでとこれからをどう考えるか、長谷川一明社長に聞いた。

JR西日本社長
長谷川一明[はせがわ・かずあき] 氏
JR西日本社長 1957年三重県生まれ、東京大学法学部卒。81年に国鉄に入社。岡山鉄道管理局、本社経理局、大蔵省(現財務省)出向などを経験し、JR西日本に所属。岡山支社長、近畿統括本部長、副社長創造本部長を経て、2019年から社長を務める。
2022年4月に赤字ローカル線の線区別収支を初めて公開し、社会的な議論が巻き起こっています。
ハレーションが起きることは予想していました。しかし、現状の当社の経営状況と今後の展望を考えたときに、どこかで問題提起をしないと議論が進まないと考えました。
35年前の分割民営化で国鉄から引き継いだ線区は何とか維持していこうと取り組んできました。しかし、19年度に輸送密度が2000人未満だった区間(17路線30線区)のほとんどが、会社発足当初と比べて利用客数が3割以下に、つまり7割ものお客様がいなくなっています。
加えて、近畿圏の通勤・通学輸送や新幹線といった経営基盤も新型コロナウイルス禍で厳しくなっている。これから人口も減少していきます。すべての路線を当社だけで支えていくのは非常に難しい現状を知っていただく必要性に迫られました。
これは特定の線区や、いち鉄道事業者の問題として片付けられるものではなく、社会的な問題だということを認識していただきたい。今回、国土交通省の検討会において、国や地方自治体の交通行政・町づくりの在り方の問題として取り上げていただけたのはありがたいことです。国の関与のもと、各自治体の皆様と率直に議論をさせていただける展望が開けてきたと思います。
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この記事はシリーズ「鉄道の岐路 民営化35年 JRの試練」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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