JR九州はMaaSアプリ「my route」で鉄道とバスの両方を利用できる1日乗車券を発売
JR九州はMaaSアプリ「my route」で鉄道とバスの両方を利用できる1日乗車券を発売

 2019年4月、JR九州の木下貴友氏は、同じ福岡に本社を構える大手私鉄・西日本鉄道の門をたたいた。

 西鉄はグループ会社を含めて約2700台のバスを保有する、日本最大のバス事業者。九州一円に高速バス路線を展開し、JR九州とは長年、激しい競争を繰り広げてきた。そんな“敵地”にあえて乗り込んだのは、鉄道やバス、タクシーなどを組み合わせる新しい移動サービス「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」の実現のために、西鉄の協力が不可欠と考えたからだった。

 その半年後、両社の社長が並んだ記者会見が開かれ、覚書を交わすことになる。「あれは歴史的な大転換だった」。その後、モビリティサービス推進室長に就任した木下氏は、感慨深げに振り返る。

 JR九州は西鉄とタッグを組み、トヨタ自動車が開発したMaaSアプリ「my route」を用いて九州一円にMaaSを広げようとしている。宮崎県ではバス事業者の宮崎交通と協力し、JR日南線と並行して走るバス路線にも乗車できる1日乗車券を発売している。長崎県では西九州新幹線の開業に合わせ、バスや路面電車、レンタカーなど9つの交通事業者の参画を実現させた。JR九州の古宮洋二社長は「これからは競争ではなく共創の時代」と話す。

 「次の発車は徳島バス。乗り場は0番線」──。22年4月から、JR牟岐線の阿南駅(徳島県阿南市)の改札に、奇妙な行き先案内が表示されるようになっている。

 JR四国は19年3月のダイヤ改正で、利用客が少ない阿南~海部(徳島県海陽町)間の運行本数を4往復減らした。その結果、運行間隔が2時間も空く時間帯も生じた。目を付けたのが、牟岐線と並行するように走る高速バス。異なる交通事業者が運行ダイヤや運賃を調整できる「共同経営」の仕組みを使い、JRの乗車券でバスにも乗れるようにしたのだ。鉄道とバスという異なる交通手段で共同経営に取り組むのは全国初だ。

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