ひしゃげたレール、跡形もなく崩れたホームや待合室──。爆撃を受けたかのような惨状を目の当たりにして言葉を失う。JR肥薩線の瀬戸石駅(熊本県八代市)は2020年7月、豪雨による球磨川の氾濫にのみ込まれ、壊滅的な被害を受けた。沿線では住宅を再建するつち音が響き、道路や橋も仮復旧が進んでいるが、鉄道だけ2年間、時の流れが止まっている。
肥薩線を復旧させるべきか。JR九州と国土交通省、熊本県の間ではいまだに結論が出ない。背景には被災前の19年度、現在不通となっている八代(熊本県八代市)~吉松(鹿児島県湧水町)間で年間約9億円という営業赤字を出していたこと、そして利用者が少なく公共交通機関としての体を成していなかったことがある。八代~人吉(熊本県人吉市)間は、被災前の19年度の輸送密度(1km当たりの1日平均利用者数)が1987年度比81%減の414人。内訳を見ると普通乗車券の利用者が340人と大半で、通学定期利用者は64人、通勤定期利用者は10人だ。「日常的な利用がほぼないということだ」(JR九州の堀江秀理・地域戦略部担当部長)
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1018文字 / 全文1495文字
-
「おすすめ」月額プランは初月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員なら
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「鉄道の岐路 民営化35年 JRの試練」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?