日本経済の新たなリスクが、水面下で膨らんでいる。それが、身の丈以上の借金に苦しむ過剰債務企業の存在だ。コロナ禍で広がった実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が始まり、実質倒産状態にある「ゾンビ企業」が増殖しようとしている。中小企業の倒産の連鎖は地方経済の土台を揺るがし、雇用不安にも直結する。とはいえ、バブル崩壊後と同じように延命に終始すれば、産業の新陳代謝は遅れ生産性向上や賃金上昇の足かせになりかねない。苦境を成長への転機に代えられるか。再生の道を探る。(写真=Radoslav Zilinsky/Getty Images、sarunyu_foto/Getty Images)

(武田 安恵、鳴海 崇、三田 敬大、八巻 高之、馬塲 貴子)

ゾンビ企業とは
 実質的に倒産状態であるにもかかわらず、営業を継続している企業を指す。金融機関や取引先などに「支払うべきものを支払わない」状態が続いている企業、バランスシート上で債務超過状態にある企業などを指す。国際決済銀行(BIS)では「設立10年以上で、3年以上にわたりインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満の企業」と定義している。ICRは企業が支払利息の何倍の利益を稼げているかを表す指標。1未満の場合は、事業利益で利払いを負担しきれていない状態を表す。

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日経ビジネス2022年9月26日号 10~11ページより目次