行動制限を伴わない3年ぶりの夏。各地には多くの観光客が押し寄せた。抑圧された旅行熱はコロナ後に噴出が予想され、日本の“開国”も迫っている。その前に熟考すべき論点がある。「日本は再び、訪日客の数を追うべきか」だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大から3年目、初めて行動制限のない夏となった。観光地は人いきれに包まれたのか。その熱気を確認すべく取材班は各地に飛んだ。まずは空の玄関口、羽田空港(東京・大田)の様子を見てみよう。

羽田空港
羽田空港
夏休みの観光客で混雑した空港

 「こちら側のカウンターが空いています!」「福岡行きご搭乗のお客様はいらっしゃいませんか?」──。

 8月11日、羽田空港は早朝から手荷物検査を待つ人々が長蛇の列をなしていた。家族連れに、ラフな格好でスーツケースを引く人々。3年ぶりに戻ってきたお盆休みの活気だ。

 お盆期間(8月6~16日)の国内線旅客数は好調に推移。日本航空(JAL)は前年同期比107%増の110万5319人で、コロナ禍前の2019年同期比では14%減だった。全日本空輸(ANA)は前年同期比で78%増の127万1864人(19年比は26%減)。完全回復には届かないものの、「ウィズコロナの新しい旅のスタイルが定着してきた」(ANAの井上慎一社長)。

航空・鉄道、復活ののろし

 JR旅客6社のお盆期間(8月10~17日)の新幹線・在来線特急利用者数も685万人と、前年同期比で2.1倍に膨らんだ。18年比では約6割だが、人出は徐々に戻りつつある。

 羽田空港から視点を移し、神奈川県鎌倉市。NHK大河ドラマで盛り上がる“聖地”に観光客が詰めかけた。

鎌倉
鎌倉
大河ドラマの舞台として盛り上がった鎌倉

 台風一過の8月14日朝、JR鎌倉駅に到着した電車のドアが開いた途端、改札に向かう人の波がホームに押し寄せた。「久々に来たな」「3年ぶりだよ」。そんな声が駅のあちこちで響く。名所の一つ、高徳院の鎌倉大仏はコロナ禍の影響で、「胎内拝観」は休止中だったものの、家族連れや夫婦、友人同士などでにぎわいを見せていた。

 鎌倉駅の東口、飲食店や土産店が立ち並ぶ「小町通り」も人の群れでごった返していた。「こっちの方が人出は断然多いですね」。大阪から観光で鶴岡八幡宮を訪れた3人家族は混雑に驚いた様子。鎌倉市内のある観光名所に10年勤めているという男性は、「今年は今までで一番、人が多い印象。コロナ禍の前より増えているかも」と盛況ぶりに目を見張っていた。