ソニーグループと提携し、電気自動車(EV)を開発・販売する新会社を共同出資で立ち上げるホンダ。異例のタッグで目指すのは、ホンダ、ソニーという母体に縛られない、独立したスタートアップの創造だ。自動車業界を揺さぶる大きなうねりを生き抜くため、ホンダは変化を求めて動き出した。

2022年3月、モビリティー分野での提携を発表したソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長(左)とホンダの三部敏宏社長。折半出資で年内に発足させる新会社、ソニー・ホンダモビリティが25年をめどにEVを発売する(写真=ロイター/アフロ)
2022年3月、モビリティー分野での提携を発表したソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長(左)とホンダの三部敏宏社長。折半出資で年内に発足させる新会社、ソニー・ホンダモビリティが25年をめどにEVを発売する(写真=ロイター/アフロ)

 2021年12月、ホンダの三部敏宏社長に1本の電話がかかってきた。相手はソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長だ。年明けに米ラスベガスで開かれるテクノロジー見本市「CES」への出席を控えていた吉田氏。出発直前の電話には、単なる年の瀬のあいさつにとどまらない、信頼関係の確認という意味があった。

 この時すでに2人には胸に秘めた共通の青写真があった。「ホンダとソニーでEV市場に打って出る」──。

 それから2カ月余りたった今年3月初め、ホンダとソニーはEV事業での提携を発表し、世間をあっと言わせた。共同開発するEVを25年をめどに発売し、自動車向けサービスを事業化する。年内に事業主体となる新会社、ソニー・ホンダモビリティを折半出資で設立するとも明かした。

 「100年に1度の大変革」と呼ばれる大きなうねりの中にある自動車業界。世界で急加速する電動化は、動力源がエンジンからモーターへ切り替わるだけにとどまらない。自動運転や通信機能などソフトウエアの比重が高まり、“走る情報端末”となる車の価値そのものが問い直される。

異業種との掛け算で価値

 提携へ先に声をかけたのは、21年4月に9代目のホンダ社長に就任した三部氏。新しい価値を生むにはどうしたらいいのか。頭の中には「異業種との掛け算で、何か新しい価値を生み出せないだろうか」との思いがぼんやりと浮かんでいた。いくつかの候補があった中、一番インパクトがあると狙ったのがソニーだった。

 ソニーはモビリティー(移動)事業への関心を公にしており、20年1月には独自に開発した試作EVも発表していた。もっとも、受託製造会社に頼んで“一品物”を造ることはできても、車を量産するノウハウを持ち合わせてはいない。本気でEV市場に切り込むなら既存の自動車メーカーと組むのが近道といえた。