輸入農産物の確保が不透明な時代に突入。最低限の自給率は必要だ。信頼できる国との関係を深めて貿易量を維持。日本からの輸出も強化する。大規模生産者と中小営農者とのベストバランスを探り、農協も動くべきだ。

 ここまで見てきた通り、不安定化する世界情勢に備えて、国内の食料生産体制は維持、拡大する必要がある。ところがコメも生乳も、余ったときの需給調整に困り、いかに減産するかがテーマとなってしまっていた。宮城大学の大泉一貫名誉教授は「国内で余剰なら海外で需要があるところを探すべきだ。日本はその発想が長らく乏しかった」と指摘する。

 日本の農林水産物の輸出は目標からやや遅れ、2021年に1兆円の大台を突破した。ホタテ貝、牛肉、ウイスキーなど高級食材がけん引役となっている。次の5兆円目標を達成するには、こうした「スター品目」以外も伸ばす必要がある。

 世界の輸出国と比べると、日本の輸出はまだ小規模と言える。国連食糧農業機関(FAO)の20年時点での農産物データによると、米国の輸出額は1479億ドルだった。国土面積が九州と同程度で先進的な農業大国であるオランダは1008億ドル。日本は10年前と比べて9割増加したものの、59億ドルなので桁が2つ少ない。成長するアジア各国との関係強化が重要だ。

日本は「みずほの国」として、美しい田園風景を守ってきた。再びテコ入れできれば、農業に夜明けが訪れる
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輸入の変動リスク、最小限に

 卵かけご飯やラーメンなど現代の日本の食文化は、畜産用の餌を含む大量の穀物輸入なしには成り立たない。「リスク低減のためにも国産原料を伸ばす努力はするが、全て自給するのは不可能。いざというときも輸出し続けてくれる友好国との関係は欠かせない」と敷島製パンの盛田淳夫社長は言う。

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この記事はシリーズ「瀬戸際の食料 戦争と円安が日本を追い詰める」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。