コロナ禍で外食や学校向け需要が減ってしまい、社会問題にもなった牛乳。それでも国産の貴重な栄養源だが、餌は輸入に頼り、供給コストが急上昇。生き物なので乳量の制御は難しい。酪農業と乳業は板挟みになっている。

乳業が酪農団体から仕入れる生乳コストは秋から1割上昇する(東京・練馬のスーパー、アキダイ)
乳業が酪農団体から仕入れる生乳コストは秋から1割上昇する(東京・練馬のスーパー、アキダイ)

 「生乳過剰のイメージが強くなってしまったが、酪農経営が大変になっていることを消費者の皆さんに理解してもらわないと乳業が立ちゆかなくなる」。雪印メグミルクの小板橋正人常務は苦渋の表情を浮かべた。

雪印メグミルクの小板橋常務は、酪農経営を支えないと乳業も存立できないと危機感を募らせる
雪印メグミルクの小板橋常務は、酪農経営を支えないと乳業も存立できないと危機感を募らせる

 新型コロナウイルス禍によって多くの小学校が学級閉鎖に追い込まれ、2021年冬には加熱殺菌して牛乳にする前の「生乳」が余った。国や業界団体は必死に消費キャンペーンを展開。ローソンもホットミルクを半額にして販売し、消費拡大を応援した。その結果、どうにか生乳廃棄を免れたのは記憶に新しい。

牛乳、薄氷の需給調整

 こうした需給関係で考えると、モノの値段は下がることになる。しかし牛は生き物なので、給食がお休みになったからといって、餌を食べるのを「お休み」にはできない。PART1で見た通り穀物相場は急騰しているから、酪農家の経営は厳しくなる。

 大手乳業はJAグループのような酪農団体から生乳を買い付けており、期間ごとに交渉して価格を決めている。今年8月4日には北海道のホクレン農業共同組合連合会と、緊急的な協議が決着。牛乳向けの生乳は11月から、1kg当たり10円(8.2%)引き上げることが決まった。年度の途中で乳価が上がるのは9年ぶりだ。

 こうなると、乳業各社はいずれ牛乳や乳製品の値上げに踏み切らざるを得ないだろう。08年にも穀物価格が高騰し、乳業の仕入れコストである乳価は09年3月から10円上昇した。そして明治や森永乳業を含む大手乳業各社が牛乳を値上げし、スーパーのバイヤーと丁々発止のやり取りが繰り広げられた。