【先着500人に無料公開!】日経ビジネスは登録会員限定「無料開放」キャンペーンを実施中。評判の高かった特集記事を毎日1本ずつ、先着500名様に無料公開します。12月5日(月)~12月9日(金)は「イーロン・マスクの頭の中」特集です。
- ツイッター訴訟の舞台裏 真実を暴く策を立てた「黒幕」 12月5日(月)12時~
- すべては「人類を救う」ため 火星移住に全力疾走 裏で支える7人の侍 12月6日(火)12時~
- 「信仰者」が米国で急増中 熱狂×ユーチューブで拡散する「マスク教」 12月7日(水)12時~
- 異端のリーダーはこう生まれた 周囲を翻弄する「天使」と「悪魔」 12月8日(木)12時~(今回)
- マスク流リーダーシップ 「紙一重」の情熱が生むビジョンと現場主義 12月9日(金)12時~
相手を容赦なくたたき潰すかと思えば、あり得ないほどの感情移入と優しさを見せる。多くの人にとって理解しがたいイーロン・マスク氏の性質はどのように形成されたのか。異端のリーダーの波乱に満ちた半生を振り返る。
「彼には異なる2つの顔がある。基本はいいやつだが、一緒に働きたくはないね」。イーロン・マスク氏を直接知るシリコンバレー関係者の多くは、こう口をそろえる。
実際、同氏のファンや一緒に働く社員、苦楽を共にしてきた経営層を取材してみると、情にほだされて無条件の優しさを見せる側面と、言い訳を一切許さない厳しい経営者の横顔が浮かび上がる。ファンボーイのカリスマ、ガリレオ・ラッセルさんですら、「客観的な立場からイーロンに物が言える今の立場がちょうどいい。テスラやスペースXで働くのはつらそうだ」と肩をすくめる。
異端の経営者「イーロン・マスク」はいかに誕生したのか。これをひもとくカギがこの二面性にある。
自ら打ち明けた「困難」
「私はアスペルガー症候群を持つ最初の司会者だ」。マスク氏は2021年5月に米コメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ」に出演し、こう打ち明けて世間を驚かせた。
アスペルガー症候群を持つ人は、相手の表情や口調から発言そのものには含まれていない意図をくみ取る「社会性コミュニケーション」や、相手の立場に立って物事を見る「社会性イマジネーション」に難があるとされる。13年に米精神医学会が実施した改訂で、アスペルガー症候群というカテゴリーはなくなり従来の自閉症などと併せて「自閉スペクトラム症」に統一された。一般には軽度で社会生活を営めないほどではないとされている。
22年4月に出場したスピーチイベント「TED」でマスク氏は、この件について問われると、幼少期の記憶をこう振り返った。「私には、相手の言ったことを額面通りに受け取る傾向があった。でも後で、その認識が間違っていたと分かる。みんなは、必ずしも伝えたいことをそのまま口にしているわけではないのだと理解するまで、しばらくかかった」
マスク氏は1971年、南アフリカ北東部のプレトリアで英国人の父エロールさん、カナダ人の母メイさんの間に生まれた。下に1歳下の弟キンバル氏と、2歳下の妹トスカさんがいる。
学校ではうまく友達と交流できず、缶を顔に投げられるなどいじめに遭った。79年に両親が離婚。兄弟は父と、妹は母と過ごすようになるが、父のエロール氏は子どもに厳しく接していたとされ、マスク氏は成人してからもあらゆる場面で父を「信じがたいほどの悪人」と非難している。
いじめから逃れるため、次第に家にこもってSF小説を読んだりコンピューターでプログラミングをしたりするようになった。12歳のときにゲームソフト「ブラスター」を開発して販売している。SF小説は後に宇宙開発への夢に、プログラミング技術は後に会社の起業へとつながった。28歳のときには弟のキンバル氏と、オンライン出版ソフト開発会社「Zip2」を立ち上げている。
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